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アテイラはガラリア侵攻を開始すると、
騎兵隊長ゲリダリクを先鋒に据え、軍勢をさらに西へ進めた。
「道を開け。」
その一声とともに、黒い騎馬の群れが街道を駆け抜ける。
地鳴りのような蹄の音が大地を震わせ、土煙が空を覆った。
街道沿いの村々は逃げ惑い、都市は固く門を閉ざす。
だが、それで止まるヴァルケン軍ではなかった。
降伏を受け入れた町は財を奪われ、家畜を連れ去られ、
若者たちは兵として連行された。
わずかでも抵抗を見せた都市には、歩兵隊長ガラメールが重装歩兵を率いて現れる。
「囲め。」
短い命令とともに城壁は完全に包囲され、補給路は断たれた。
投石機が城壁を打ち砕き、破城槌が門を揺るがす。
降伏を拒んだ都市は、一つ、また一つと炎に包まれていった。
逃げ延びた民は口々に恐怖を語る。
「黒い騎兵が来る。」
「抵抗すれば街ごと消える。」
その噂は風より早くガラリア全土へ広がり、
人々の心を戦う前から打ち砕いていった。
かつてジュリアスが数十年をかけて平定した豊かな属州は、
いまやヴァルケン軍の軍靴に踏みにじられていた。
圧倒的な機動力と軍事力の前に、
ガラリアはなすすべもなく蹂躙されていったのである。
「王より伝令です。」
天幕へ駆け込んだ伝令が膝をつく。
ゲリダリクは羊皮紙から目を離さず、ぶっきらぼうに尋ねた。
「王はなんと?」
「カタロウムに集結せよ、とのことです。」
「ほう。」
ゲリダリクは立ち上がり、大きく肩を回した。
「ちょうど退屈していたところだ。」
口元に獰猛な笑みが浮かぶ。
「よかろう。騎兵どもを集めろ。」
伝令は続ける。
「敵軍も同地へ向かっております。」
「で、敵さんはどのくらいなんだ?」
「約三万です。」
「三万か。」
ゲリダリクは鼻で笑った。
「で、うちの大将は、やるって言ってるのか?」
「はい。決戦を望んでおります。」
その言葉を聞くと、ゲリダリクはしばらく黙り込んだ。
やがて腕を組み、豪快に笑う。
「そうか。」
「じゃあ、もう勝つ算段はついているんだな。」
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その一言に、天幕の空気が変わる。
誰一人として異論を口にする者はいない。
ヴァルケン軍では、アテイラが決戦を選ぶ時、それは勝利を確信した時を意味していた。
ゲリダリクは槍を手に取ると、天幕の外へ歩き出す。
「野郎どもを叩き起こせ。」
「狩りの時間だ。」
ガラリア総督府には、久しく聞くことのなかった活気が戻っていた。
各地から集まった将軍や伝令たちが慌ただしく行き交い、
作戦室にはガラリア全土の地図が広げられている。
その中央に立つライナーの前へ、一人の男が進み出た。
「ライナー王のご出馬により、わが軍の士気は大いに上がっております。」
落ち着いた声で頭を垂れたのは、ガラリア総督府の将軍アルミンだった。
「うむ。」
ライナーは静かに頷く。
「貴公もよく耐えてくれた。」
「身に余るお言葉です。」
「ここからは共に反撃に出ようではないか。」
「ははっ!」
力強い返答が作戦室に響いた。
アルミンは振り返ると、壁に掲げられたガラリアの地図へ視線を向ける。
その瞳には、この土地への深い思いが宿っていた。
彼はもともとガラリアの人間だった。
かつてジュリアスがガラリア遠征を行った際、和平の証として、
現地有力部族の族長の息子であった彼は人質としてグラン王都へ送られたのである。
幼くして故郷を離れた少年は、異国の都で育った。
そこで学んだのは、文字、法律、そして軍事。
やがて自ら志願してグラン軍へ入り、
その卓越した才覚によって次々と武功を重ねていく。
その才能に最初に目を留めたのは、英雄ジュリアスだった。
彼はアルミンをただの人質とは見なさなかった。
ガラリアを知り、グランも知る男。
その二つの世界を結ぶ存在になれると見抜いていたのかもしれない。
将軍へと抜擢されたアルミンは故郷ガラリアへ戻り、
武力だけではなく、道路を整え、都市を築き、法を広め、
人々にグランの文化を根付かせていった。
ガラリアの民から見れば彼は同胞であり、グランの将兵から見れば忠実な将軍。
二つの国を知る彼ほど、この地を治めるにふさわしい人物はいなかった。
アグリは机上に広げられた地図へ視線を落とした。
一本の棒で布陣をなぞる。
「右翼にはアルミン将軍率いるガラリア軍。」
棒が右端へ滑る。
「中央はグラン軍主力。ライナー王自らご指揮いただきます。」
さらに左へ動かす。
「左翼は私が率いる諸部族連合軍です。」
将軍たちが静かに耳を傾ける。
「陛下の甥、ティモシー殿とドルトス殿には
中央軍前線の指揮をお願いいたします。」
アグリはライナーへ目を向けた。
「我が軍の中核は重歩兵です。中央軍の盾列は容易には破られません。」
再び地図を指し示す。
「敵は必ず中央突破を狙ってくるでしょう。」
「その間、右翼と左翼が前進し、敵軍の側面を圧迫します。」
棒の先が左右から中央へゆっくりと動いた。
「そして包囲。」
その一言だけで十分だった。
「慌てる必要はありません。」
「敵が中央へ深く食い込むほど、我々の勝機は大きくなります。」
淡々とした説明だった。
しかし、
その落ち着きには幾多の戦場を勝ち抜いてきた男だけが持つ確信があった。
作戦室には静かな緊張が漂い、将軍たちは無言で頷いた。
軍議が終わると、ガラリア全土に出陣命令が下った。
重歩兵が盾を打ち鳴らし、軍旗が一斉に風を受ける。
ライナーは愛馬へまたがり、西の空を見据えた。
「出陣だ。」
その号令とともに三万の軍勢が動き出した。
一方その頃。
東からはアテイラ率いるヴァルケン軍が土煙を巻き上げながら
カタロウムへ迫っていた。
二つの大軍は、避けられぬ運命に導かれるように、
一つの平原を目指して進軍していく。
決戦の時は、刻一刻と近づいていた。
コメント
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うわああカタロウムに両軍集結…!🔥 いよいよ決戦の予感がすごすぎる…! ゲリダリクの「狩りの時間だ」最高に強キャラすぎて震えた😭✨ アグリの淡々とした作戦説明もめっちゃかっこよかったし、アルミンの背景語りでグッときた…!二つの世界を知る将軍がどう動くのか、続きが気になりすぎるよぉ〜!!