テラーノベル
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夕方。「はぁ」
「ふぅ」
と同時に、二種類のため息が。由貴と虹雨は顔を合わせる。由貴はヘッドホンをしていたため視線で気付いたようだ。
「なんなん」
「なんでもない。由貴はどうや」
2人ノートパソコンを突き合わせてブランチの後からずっと作業をしている。かれこれ二、三時間か。
「動画三本目の作業中」
「手際良いな」
「あんがと、部屋の環境がええからや。虹雨は」
「……まぁそこそこ」
「……」
「なんや!」
虹雨のパソコンを見るとネットサーフィンをしていた。自分のエゴサーチ。
「……俺に動画作らせておいて……」
「息抜きや、息抜き。ちゃんと報告書書いとる」
「自分一人でできる除霊作業を僕も巻き込んで……そしてその報告書一枚書くのに何時間かけとんのや」
「報告書一枚にもちゃんとした書き方があるから難しいんやて」
言い訳をしながら虹雨は言い訳をしながらもタイピングを始める。どうやら本格的に打ち込み始めたようだ。
由貴は音響チェックをし、三本目も終わらせた。
「由貴はほんと早いなぁ、なんで動画作るのを仕事にしなかったんや」
「なんでやろなー……生活のために、お金稼ぐために働いてたような気もする」
「所謂、ライスワークか」
「ライスワーク? ライフワークやなくて?」
「そ、お金稼ぐため、飯食うための仕事。で、俺は今ライフワークやで。お金にならんが生き甲斐になっとる」
「……除霊して動画作成して……稼げんのやな」
「ルームロンダリングもそこまで稼げへんし。って興味持ったんか」
由貴はコクリと頷いた。コーヒーが尽きかけたことに気づかずコップに口をつけてコーヒーがないことに気づいた。
そのコップを虹雨が取り上げコーヒーを入れに行く。
「悪い」
「もう二杯ぐらいやってる」
「気づかなかったわ……あんがと」
「お前という奴は。ほんと昔と変わらん」
由貴は集中してしまうと周りが見えなくなる。子供の頃その世話焼きを虹雨がしていた。
「……虹雨もかわらんわぁ」
「そか?」
「にしてもその仕事……どこから依頼が来るんや」
「やっぱり興味あるんやん」
「あるある、もう俺に残ってるのは幽霊みえる力しかない……」
と由貴はノートパソコンを閉じてヘッドホンを置き、立ち上がって両腕を上げて伸びをした。
「でかなったな」
「そうか、お前がチビのままやろ」
「るせぇよ。ミニマムサイズの方が動きやすいんや」
と虹雨も、立ち上がって伸びをするが由貴には届かない。頑張ってさらに伸びても届かないのに由貴はさらに伸びる。
「足が短いから無理やな」
「くそっ」
休憩もほどほどにし、由貴は噂のコンビニの動画をネット上にアップした。
「よし、これでオッケーや」
「おつかれさん、疲れたやろ」
「虹雨が労いの言葉なんて雨が降る、ひどい話……雪、猛吹雪、雹霰」
「んなことあるかい」
と虹雨が鼻で笑った瞬間、外は急に暗くなり、けたたましい音が。
「ほれみ」
由貴は指差して笑った。
「うわーっ、すげー言霊」
「言霊とかゆうな、うさんくさい」
「なんや、うさんくさいって……本当に言霊は存在するんや」
「へぇ、って……あ、下着干したままや」
「うわ、はよせぇ、飛んでいったらどうするんや」
虹雨は慌ててベランダに行った。
「……下に落ちてしもた」
「言霊、すっご」
「やら、言霊はあるんや……下取りに行こや」
「おう、てか下って……」
由貴と虹雨はベランダを見た。
「これ以上言うな」
「言霊、やろ」
2人はエレベーターに乗る。
「このエレベーターもなんか新しいな」
「やっぱ気づいたか」
「あぁ、外観の割には真新しい……って」
「これ以上いうのはよそうか」
「うん、なんとなく今はやめとくわ」
何かを知ってる虹雨。絶対何かあるかと察する由貴。エレベーターは1階に着いた。洗濯物が落ちた場所は一階住人のベランダと駐車場の間の植え込みであった。
「初めてきた。綺麗に剪定されているな」
「でもここにあの男が落ちたんやろ」
「そやな、でも誰も花束とかおかんのやな」
「そやろ、家族全員死んじゃったし……」
なかなか手を伸ばすが虹雨は洗濯物に届かない。すると手の長い由貴がひょいと取り上げる。
「あんがと」
「おう、って下着汚れちゃったなぁ……また洗濯しなおしやな」
「買いに行くか、ついでにこの街案内してやる」
「そうだな。ここにはまだ住みたいし」
「そやな、ここは悪くないで。都会だけども落ち着いとる。管理人さんに連絡してお前も住めるか聞いてみなきゃなぁ」
「住めないこともあるの」
「そやな、一応申請しなかん……曰く付きの部屋だったらそれくらい多めに見てくれるやろうけどな」
すると2人の元に頭のはげた中年の男がやってきた。
「あっどうも」
「管理人さん」
その男はアパートの管理人だった。彼は掃除道具を持っている。この辺りの掃除だろう。
「ちょうどよかった。ここに落ちた男の部屋、除霊させていただきましたことをご報告します」
「あー、ほんとかね。それはよかった」
「上司には報告済みですから時期に連絡があります」
「……そうかいそうかい」
依頼をしたのはこの管理人だが、少し浮かない顔をしている。
「あとしばらくこの男も同居する予定なんですが……」
由貴は頭を下げた。しかしまだ浮かない顔をする管理人。
「すまない、実は……」
#衝撃のラスト
山根利広
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コメント
1件
うわ、第11話読んだよ!由貴と虹雨の掛け合いがもうほんと好きすぎる…「言霊すっご」って言った瞬間に外が暗くなって洗濯物落ちる流れ、思わず笑っちゃった(笑)でもエレベーターのあの違和感とか、管理人の浮かない顔とか、なんかこの先が気になって仕方ない…!ふたりの距離感が絶妙で、読んでてほっこりするけど、背筋もぞっとする、麻木香豆さんの作品の空気感が詰まってたよ🌙