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第三十二話「冷却と保存、魂の真空パック」


🔪リヒト、動かない肉


薄明かりのアパート室内。

床に崩れ落ちたリヒトは、自らの焼けた皮膚の上にタオルをかけていた。

口元にうっすら笑みを残し、

瞳は閉じられ、微熱の残る肌がまだ息をしていた。


周囲には血の匂い、焼けた脂、薬品――

そして、“生きたまま冷蔵された死の気配”。




🔪スケアリーの実況「生冷保存、魂の密封」


「ひひひ……ひひひひひひっッッ!!!」

スケアリーが冷蔵庫の中に頭を突っ込んだまま狂笑。


「これこれこれこれこれ!!!!

**“加熱済みの肉”をそのまま冷やして“保存”しようとするやつ!!!!」」


「しかも! 保存するのは“肉体”じゃなくて、

**“焼き尽くされた魂の余韻”!!!!!」」


「うまぁあああ……この後味……

焦げ目と涙と、“誰にも届かなかった愛”が、

ピタッと密閉されたこの密室空間!!!!」




🔪ユリウス、そっと室内へ


ドアが静かに開く。

ユリウスが足を踏み入れた。


リヒトの横に膝をつき、

彼の呼吸を確かめ――目を伏せる。


「生きてはいる。

でも、“調理”はもう終わった。」


「こいつは、自分の中に“永遠の晩餐”を作りたかったんだな。」




🔪リヒトの最後の一言(微睡の中)


「ユリウスくん……

ねぇ、これって……

“冷めても、美味しいかな……”」


かすれた声。

まるで料理の仕上がりを心配するシェフのようだった。


ユリウスは静かに頷く。


「……ああ。

きっと“誰にも真似できない一皿”だったよ。」




🔪スケアリーの食レポ「保存された感情のテリーヌ」


「ッふひひ……ふふふふふふ……」


スケアリーが冷蔵庫から取り出した、

リヒトの焼痕入りのシャツをナプキンにして口を拭う。


「これはもう……

“食べたら泣く味”だったよ……」


「熱々じゃない、ぬるくもない、

**でも“最後の温度”がちゃんと心臓に届く料理”。」


「リヒト、お前はな……

“完全に味が閉じ込められた一皿”だったんだよ……」




🔪ラストカット:真空パックされた“自己”


机の上に置かれた、

リヒトが自ら密封したメモリーレコーダー。

中には、毎日の“調理記録”と、“感覚の断片”が吹き込まれていた。


それはもう、

“誰にも食べられない料理”だった。





次回 → 第三十三話「模倣の仮面、窃取された顔」

スケアリーイズム - 完全犯罪のレシピ

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