テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
祝い事が大好きなこの山田旅館の主、松吉と米吉の敏腕手法のおかげで、その日の夕方にはジンの紋付き袴が届いた
今は山田旅館の奥の間で、着付け師の松吉の親戚、「みや江とすず江」が「ホホホホホ」とコロコロ笑いながら、ジンの周りをてきぱきと動き回っている、ジンはかかしのように大の字で突っ立ったまま、目だけをキョロキョロ動かし、身動き出来ないでいた
メジャーを首に巻き、最高の花婿にジンを仕上げようと一心を注いでいる、ジンは小柄な彼女達を見て、島で何十年も式の着付けを担ってきたベテランだ、逆らわない方が良いだろうと考えた
「ワシのひい爺様は大きな人じゃった、お前さんをひと目見た時から、このひい爺様の紋付き袴を着せてやりたかったんじゃ」
松吉がジンを見て嬉しそうに腕を組んで言った、恭しくヒノキの化粧箱から和紙に包まれた紋付き袴が顔を出した
「虫食いはないね?みや江さんすず江さん?」
「あるものですか!それはそれは大切に保管してましたからね」
みや江がそっと生地を確かめる、黒紋付の五つ紋りの着物は年月を経てもしっとりとした光沢を保ち、上質の生地だと思った、しかし丈がつんつるてんだった
オホホホッ
「大丈夫!大丈夫!なんとかなりますよ」
「お端折りを伸ばしましょう」
「腰は詰めましょう!」
気の良い叔母二人はケラケラ笑う
「来年の正月はワシらが大阪へ行くわな」
ホホホホッ
「まぁ!いいわね!奈良、京都観光じゃないの!」
「USJもいいわね!」
「ちょっと足を延ばして神戸異人館!」
「琵琶湖のうなぎもよろしくてよ!」
「和歌山のイルカダイビング!」
ホホホホッと笑いながら裾にブスブスまち針を刺していく叔母二人、ジンは少しでも動いたら自分が刺される恐怖で微動だに出来なかった
―来年・・・その頃は・・・―
ジンの思考が一瞬止まった・・・来年の正月・・・そのとき自分達はどうしているのだろう・・・いや、そもそも「自分達」という言葉が、来年も成立しているのだろうか
「なぁ!いいだろう?ワシをパンさんの所へ泊めておくれ!」
キラキラした瞳で米吉がジンにおねだりする、あわててジンが言う
「あ~・・・それでしたらホテルを取りましょう」
「いかん!いかん!ホテルなんか邪道じゃ、宿泊は山田旅館が一番じゃ!」
「そうよ!そうよ!身内ですもの!ホテルなんてもったいない!ジンさんのおうちの隅で寝かせてもらえば充分よぉ~身内ですもの!」
「私は玄関でもかまわないわ、身内ですもの」
なぜかいつの間にやら自分達も行く計画に入っている叔母達も言う
「なぁ!いいだろ?チョンさんの家に泊まりたいんじゃぁ~~!ワシら家族じゃろ?」
「・・・ジンです・・・」
コメント
2件
チョンさんにパンさん🤣 松米コンビや親戚の方に愛されてるねジンさん😊みーんなまとめて大阪へ招待してあげて😁
ジンさんを囲んで好き勝手わちゃわちゃ可愛い〜🤣🤣 もう親族ご一行京阪神ツアー決行しちゃおう!チョンさん😆👍