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「侑くんとお弟子さんの彼女、二人、とてもお似合いのカップルだね」
葉山社長にそう言われてしまい、瑠衣は顔から火が吹き出そうになってしまう。
侑をチラリと横目に見ると、彼も、予想だにしなかった事を言われて恥ずかしくなっているのか、若干表情に赤みが差している。
すると、二人を煽るように、葉山社長が言葉を紡ぐ。
「ほら、二人して同じように照れてる。演奏面限定かもしれないけど、弟子は師匠に似てくると言われている。でも君たちは、それ以外の部分も似ているのかもしれないね」
(え? 私と響野先生が似ている? 全然似てないでしょ? だって私、あんな冷徹じゃないし……!)
思わず苦笑してしまう瑠衣だったが、葉山社長は挨拶周りに忙しいのだろう。ここで言葉を結んだ。
「息子たちも、会場のどこかにいると思うから、会ってやってくれるかな?」
「ええ、もちろんです」
葉山社長は『それでは、失礼』と言葉を残し、挨拶回りに向かった。
「…………参ったな」
まだ紅潮している侑に、瑠衣は曖昧な笑いを浮かべる事しかできない。
「さて、次は息子たちに会いに行くとするか」
「分かりました」
言いながら歩き出そうとした瞬間、背後から女性の声が二人の背中に刺さる。
「侑!」
侑が後ろを振り返り、声の主を見た瞬間、鷹のような鋭い瞳が一瞬見開かれたのを、瑠衣は見てしまった。
「レナ………」
そこにいたのは、日本国内でも有名なピアニストの一人、島野レナだった。
明るめの茶色のロングヘアは毛先を緩く巻き、大きな漆黒の瞳は吸い込まれそうに澄み、真っ赤なドレスが一際目を惹く。
(うわぁ……ものすごく綺麗な人。っていうか、呼び捨てにしているって事は、先生の彼女なのかな……)
瑠衣の心の中に暗雲が立ち込め、黙ったまま、侑とレナを見やる事しかできなかった。