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次に、サブタイトルに込めた意味についてご紹介します。
お気づきの方は、もしかしたらすでにいらっしゃるかもしれませんが、『怪異探求倶楽部』のサブタイトルには、一部を除いて『ギリシャ神話』に登場する神々や人物の名前が使われています。
そもそもなぜギリシャ神話を採用したのか。
ギリシャ神話と聞くと、神の戦いみたいな神々しいもの想像されるかもしれません。
しかし調べてみるとものすごく人間臭いんです。
嫉妬や憎悪など、ヒューマンドラマと言っても過言ではないほどに人間臭いんです。
その人間臭さに魅力を感じたので、サブタイトルに採用しました。
あと、ギリシャ神話ってなんかカッコいいよね、と言う単純な思いつきもあったりします。
◇ ◇ ◇
脱線しましたが、これよりそれぞれのサブタイトルに込めた意味と、なぜギリシャ神話の名前を使ったのかについて解説していきます。
◇ ◇ ◇
まず、ギリシャ神話を使っていないエピソードは、
『File1 偽心霊スポット作戦』
『File4 おじろくおばさ』
の2つです。
『偽心霊スポット作戦』は、作品の開幕を飾るエピソードということもあり、『怪異探求倶楽部』の世界観やコンセプト、そして僕がこの作品に込めた想いを、これから読者の皆さんに伝えていくための回でもあります。
そんな最初のエピソードで、いきなりギリシャ神話に由来する名前をサブタイトルにしてしまうと、
「ん?この変わったサブタイトルは何?」
と、読者の方を混乱させてしまうかもしれないと思いました。
そのため、あえてギリシャ神話とは関係のないタイトルにしています。
◇ ◇ ◇
そして、もう一つが『File4 おじろくおばさ』です。
このエピソードは、『怪異探求倶楽部』の中で唯一、「実在した」とされる伝承を題材にしています。
この回で僕が伝えたかったのは、『おじろくおば』という制度が生まれた背景にあった、人間の恐ろしい側面や思想は、決して過去だけのものではなく、現在でも形を変えて存在しているのではないか、ということです。
親と子という関係だけではなく、人と人との関係そのものを大切にする。
もし、誰もが相手を一人の人間として尊重することができていれば『おじろくおばさ』のような制度は生まれなかったのではないか。
僕は、このエピソードを通して、そんなことを伝えたいと思いました。
だからこそ、この回ではあえてギリシャ神話に由来する名前を使わず、伝承として残されている『おじろくおばさ』という名前をそのままサブタイトルに採用しました。
ギリシャ神話という別の要素を加えることで、僕がこのエピソードで本当に伝えたかったことが、少し薄れてしまうような気がしたからです。
『偽心霊スポット作戦』は、これから作品の世界観を知ってもらうために。
『おじろくおばさ』は、この物語で伝えたいテーマそのものを、余計な要素で薄めないために。
この2つだけは、あえてギリシャ神話を使わないサブタイトルにしています。
◇ ◇ ◇
上記で語ったエピソード以外は、全てギリシャ神話の神々や伝承の名前などを使っています。
まずは『File2ネメシスの影』
ネメシスの影は、自殺に見せかけて殺害された
当時女子中学生だったの千歳の霊が、犯人たち4人に
復讐しているという内容ですが
ネメシスはギリシャ神話に出てくる神の名前で
『義憤と復讐の女神』と言われており
人間の『思い上がり』に対する
神の怒りと罰を擬人化した神です。
分不相応に幸福を誇る者に天罰を下し、秩序を保つ公正な審判者として恐れられたと伝えられています。
父親が有名な地主で、教師たちも迂闊に手を出せない、という状況を利用して好き放題やっていた、いじめの首謀者に霊が裁きを下す!という共通点からネメシスをサブタイトルに採用しました。
◇ ◇ ◇
次に『File3カサンドラの聲』
カサンドラの聲は、夜な夜な正体不明の女性の声が聞こえてくる事で不眠に悩んでいる朝陽が主軸の話で、調べていくうちにその声の正体は産みの親の生霊の声という事が判明すると言った内容ですが
カサンドラとはギリシャ神話に出てくる王女の名前で
トロイアの女王としても有名で、太陽神アポロンから求愛の証として預言の力を授かりました。
しかし、カサンドラはアポロンの愛を拒絶した事により、アポロンから『カサンドラの言葉を誰も信じなくなる』という呪いをかけられてしまいます。
その結果、預言の力で民を幸せに導こうとするカサンドラの聲はアポロンからかけられた『呪い』によって誰からも信じてもらえなくなってしまいます。
また、発達障害のあるパートナーや家族との関係において、情緒的な交流や意思疎通がうまくいかず、必死に訴えても周囲から理解されない状態を指す『カサンドラ症候群』の由来としても知られています。
朝陽を虐待しておらず、実は癇癪が原因という真実を話しても、警察には信じてもらえず逮捕されてしまうという絹の悲劇とカサンドラがリンクしているためサブタイトルに採用しました。
◇ ◇ ◇
次に『File5ハデスの代弁者』
ハデスの代弁者は、自らを冥府の王ハデスより力を授かった代弁者と謳う心霊商法詐欺師が出てくるといった内容で
ハデスは、ギリシャ神話に登場する神の名前で、死者の国である冥府を治める神として知られています。
有名なゼウスやポセイドンの兄弟にあたり、ゼウスが天界、ポセイドンが海を支配する一方で、ハデスは冥府を支配する存在とされています。
そのため、現代では『死神』のようなイメージで語られることもありますが、ハデス自身は死をもたらす神というよりも、死者の魂が行き着く冥府を統べる王という役割を担っていた、分かりやすく日本流に言えば『閻魔大王』の様な神です。
ハデスの代弁者は、冥府を統べるハデスの名を利用し、自らをその代理人であるかのように見せる霊貴冥孤の人物像そのものを表したタイトルになっています。
◇ ◇ ◇
次に『File6カルネアデスバス』
カルネアデスバスは、バスジャックの被害に遭った運転手の話で、重要な『命の選択』の末に自らの命と引き換えに乗客の命を守った事により世間から英雄だと讃えられる一方、本当に正しかったのか?という苦悩や葛藤を描いた内容で
カルネアデスバスは神から採用したのか名前ではなく、作中でも銚子や焔垂が口にしたように『カルネアデスの板』から採用しました。
その内容は、船が難破し、海に投げ出された二人の人間が、一枚の板にしがみついていたところ、その板は一人しか支えることができないほど小さかったため、片方がもう一人を海へ突き落として自分だけが生き残った、というものです。
怪異探求倶楽部を書こうと決めた時から、このカルネアデスの板を題材にした内容はやると決めていました。
要するに『カルネアデスの板』を自分流に現代版へ再解釈した話が『カルネアデスバス』になります。
他のエピソードは、まずストーリーの概要をざっくりと考えた後に、それに合うギリシャ神話を調べる、という順番だったんですが、このカルネアデスバスだけは、1番最初にカルネアデスの板を前提に置いている唯一のエピソードです。
コメント
1件
×××さん、今回のあとがきも面白かったです!各サブタイトルにギリシャ神話の神々が隠れていたとは…しかも「人間臭さ」を軸に選ばれているのが、物語のテーマとしっかり噛み合っていて素敵だなと思いました。特に「カルネアデスバス」だけは板の寓話から逆算して書かれた、という話が熱くて、構成へのこだわりが伝わってきました。次話も楽しみにしていますね!