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1話 ふっくらと琶
朝
光がゆっくり差し込む
ふっくらは丸い体をもぞもぞさせながら
布の上で目だけを開けた
短い脚はまだ眠っており
腹がふよんと上下している
ふっくら
「……おはよう……世界……」
(声が小さい)
すぐ後ろで
琶が静かに座っていた
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が
朝の光をさえぎり
ふっくらの背中に影を落とす
ふっくら
「うぇ!?
なんで起きてるの!?
朝!?早すぎない!?」
琶
「おまえが遅いだけだ」
ふっくら
「読者もびっくりしてるよ!?
わたしの朝ってこんな感じなんだ……って!」
琶
「読者は驚かない。
すでに察している」
ふっくら
「察されてるの!?!?」
ふっくらはなんとか短い脚で立ち上がり
丸い体をぷるっと振るわせる
「よし!今日もがんば……」
ふっくらは二歩歩いて
すぐ座った
「……がんばらない方向で……」
琶はあきれたように目を細める
「決断が早いな」
ふっくら
「褒めてないよね!?
いまの褒めてないよね!?」
しばらくそのまま
ふっくらは朝をぼんやり過ごし
琶は特に急かすでもなく
ただ爪で地面をとん、と軽く叩いていた
ふっくら
「……ねぇ琶、今日はなにするの?」
琶
「……何もしない」
ふっくら
「わたしより先に言うんだ……
読者の皆さん、こういう世界なんです……」
琶
「読者を巻き込むな」
ふっくら
「いや巻き込まないと説明できないよ!?
だってほんとに何も起きないんだもん!!」
琶は静かに首を傾ける
「……何も起きない日も
終わりは来る」
ふっくら
「なんか深そうなこと言ってるけど
内容は“今日はサボりです”だよね……?」
琶
「察しが早くて助かる」
ふっくら
「助けないで!?
もっとちゃんとして!!」
そのまま
ふっくらはごろりと横になり
琶は静かに空を見上げた
朝はゆるく始まり
ゆるいまま流れ
特に大事件も起こらず
危険な気配もなく
ただ
ふっくらが二度寝しようとした瞬間
“遠くで何か大きな音がしたような気がした”
ふっくら
「いまの何……?」
琶
「気のせいだ」
(絶対気のせいではない)
ふっくらは安心して寝転がり
琶は一瞬だけ
遠くの地平を鋭く見つめた
何も起きない朝が
静かに終わっていく
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