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朝の光は優しく差し込んでいた。
けれど、その光の中にいる日本の顔には、どこか翳りがあった。
空はいつも通り、何食わぬ顔で隣にいる。
「なぁ日本、今日さ、帰りにどっか寄ってこ?」
「……いいですよ」
返事はした。けれど心の中では、どこか違和感が膨らんでいた。
(ほんまに、このままいいのでしょうか……)
教室でも、空はずっと隣にいた。誰も日本に話しかけようとしない。
空の「結界」のような存在感が、すべてを遠ざけていた。
「トイレ行く時も僕がついていったほうがいい?」
冗談のようなその言葉に、日本は微かに笑った。
(でも……本当にそう言いそうな気がする)
その放課後。
家に帰ると、リビングに陸と海がそろっていた。
「日本、ちょっと話せるか?」
陸の声は、いつもより穏やかだった。でも、そこに込められた“覚悟”を、日本は感じた。
「……はい」
空が口を挟む。
「日本疲れてるし、話はまたで――」
「空。お前は黙っとけ」
陸のその一言に、空がピタリと口を閉じた。
珍しかった。
空が、誰かに押し黙るなんて。
日本の部屋。
「お前な、最近空に依存してる、大丈夫なのか?」
「……依存してるのは、空さんの方です」
「いや。日本もだ。どっちかが崩れたら、もう片方も終わりだぞ」
海が静かに言う。
「その状態は、共倒れって言うのだ、日本」
「……でも、俺は、空さんしかいないから」
その言葉に、陸の表情が痛む。
「日本には俺も海もいる。お前が助けを求めないから、見えないだけだ」
「助けて、なんて言えません……言ったら、全部壊れそうで」
「壊していいんだ。壊れてもう一回作り直せばいいんじゃないか……日本が笑える世界を」
その言葉に、日本はこらえていた涙をこぼした。
(……あぁ、僕泣きたかったんだ)
そして、部屋の外で――
空はドアの向こうに立ち、すべてを聞いていた。
その瞳に映っていたのは、割れたガラスのような、危うい光だった。