テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
33話 依頼:ふっくらの護衛(名ばかり)
朝
ふっくらは丸い体でごろごろ転がりながら
村の掲示板を見ていた
短い脚はほぼ役に立っていない
腹が地面にやさしく吸い寄せられている
掲示板には
今日の依頼が一枚だけ貼られていた
【依頼:ふっくらの護衛】
ふっくら
「……は?」
琶が後ろから近づく
大きな体
長い首
重なった鱗
影がふっくらの上に落ちる
ふっくら
「ちょ、ちょっと待って……
今日の依頼……わたし!?
護衛“される側”なの!??」
琶
「当然だろう」
ふっくら
「なんで!?」
琶
「……危ないからだ」
ふっくら
「なにが!? どこが!?
今日わたし普通に健康だよ!?
まるさも安定してるし!!?」
琶は紙をひょいと持ち上げ
依頼文を淡々と読む
「“本日、対象ふっくらは未知の危険に遭遇する恐れがあります。
つきましては護衛をお願いいたします”」
ふっくら
「未知ってなに!?
未知ってやだよ!?
未知って言葉が一番こわいよ!?」
琶
「落ち着け。
未知がなにかは、まだ未知だ」
ふっくら
「励ましゼロ!!」
二人は依頼に従って
村の道を歩き始めた
ふっくらはドキドキしながら歩く
丸い体が左右に揺れ
短い脚がぽすぽす音を立てる
ふっくら
「ねぇ琶……
ほんとに未知なの……?
なにか知ってる……?」
琶
「知っているとも言える」
ふっくら
「ひっ!!
やっぱりあるの!?
危険なやつ!?
巨大なやつ!?
丸いの嫌うやつ!?!?」
琶
「……知らないとも言える」
ふっくら
「揺さぶらないで!?
心の丸が崩壊する!!!」
琶はふっくらを見下ろし
わざと脚をゆっくり近づけていく
巨大な影がふっくらの丸い体を飲み込む
ふっくら
「やめて!!!
その演出やめて!!
不安増すだけだから!!!」
琶
「護衛の一環だ」
ふっくら
「絶対違うよね!?」
そのとき
道の先に
小さな石が落ちているのが見えた
丸い
ころんとした石
ふっくら
「……え?
これ……昨日の予言の石と……似てない……?」
琶はふっくらの肩に翼の先を置く
「行け」
ふっくら
「なんで!?
なんで押すの!?!?」
ふっくらはしぶしぶ近づく
丸い体がぷるぷる震える
石は
なにも起きない
ただの石
ふっくら
「……ただの石だよ?
ねぇ琶、これほんとに危険なのあるの……?」
琶
「さぁな」
(明らかに楽しんでいる)
ふっくらが安堵した瞬間
どこからか
ひゅる…と冷たい風が吹いた
鳥が一羽
急に飛び立つ
その影が
ふっくらの足元を横切る
ふっくら
「ひゃあ!! なに!?!?」
琶
「未知だ」
ふっくら
「いや今の鳥でしょ!?
未知じゃなくて鳥でしょ!?!?」
琶は
なにかを悟ったようにうなずく
「依頼達成だ」
ふっくら
「まだなにもしてないよ!?
未知も解決してないよ!?
鳥だよ!?ただの鳥だよ!?!?」
琶
「依頼文に“脅威を排除せよ”とは書いていない」
ふっくら
「じゃあなにすればよかったの!?」
琶
「……護衛した」
ふっくら
「してないよね!?!?」
琶はさらりと報告書を書き始める
【依頼達成:対象ふっくら、未知に遭遇するも無事保護】
ふっくら
「保護してないよね!?!?
ねぇ!? 誰か!? 読者!!
ツッコんでよ!!!」
誰も助けてくれないまま
依頼は
“成功扱い”となった