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圭の運転する車は、国立府中インターを降り、立川方面へ走行している。
美花のひと言で、またも会話が途切れ、車内に淀んだ沈黙が漂っていた。
途中、赤信号で車が停車すると、圭の左手が伸びてきて、彼女の頭をそっと撫でる。
「…………そうか。美花は男と泊まり掛けで過ごすのは……初めてなんだな。俺……」
クールな目尻を下げた圭が、頭を撫でていた手を、そのまま頬に滑らせてくる。
「…………嬉しい」
信号が青になり、彼が再びステアリングを握り直して、車を発進させた。
日野橋交差点を右折した圭の愛車が、立川通りを北上していき、中央線と南武線のガードを抜けた先の交差点を左折する。
(どうしよう……もうすぐ…………着いちゃう……)
やがて車は、圭の自宅マンションに到着すると、エントランスの前で車を止める。
「美花。すまないが、降りて待っててもらってもいいか?」
「うん」
美花が助手席のドアを開き、車を降りると、彼の愛車は車専用通路を抜けて、奥のタワーパーキングに消えた。
(もう……穴があったら速攻で入りたいっ……)
恥ずかしさのあまり、美花はマンションを見上げながら、そんな事を考えてしまう。
心臓は変わらず忙しなく打ち鳴らされている状態。
気持ちは落ち着かず、フワフワし続けたままだ。
「美花。お待たせ」
「あっ…………ああ……うんっ」
辿々しく笑顔を貼り付ける美花に、圭は手を取ると、マンションの中に入らず、すぐ近くのコンビニエンスストアへ足を運び出した。
「うち、何もないから、中に入る前にコンビニへ行こう」
「分かった……」
圭は美花を先導しながら店内に入ると、カゴを手に取り、奥へ進む。
「美花も何か必要な物があったら、買っておいた方がいい」
彼に促され、彼女はトラベルサイズの歯磨きセット、シャンプーとコンディショナーのセット、着替え用の下着を手に取ると、店の奥へ向かう。
ツナマヨネーズのおにぎりと、ハムとレタスのサンドウィッチ、アイスティを手にすると、圭が美花に近付いてきた。
「ホラ、カゴに入れておけよ」
「自分で買うから、大丈──」
「いいから。遠慮しなくていい」