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山小屋を後にした二人は、再び男の黒いセダンに乗り込み、東京方面へ向かっている。
ボコボコした山道、一般道を走行して、高速道路のインターチェンジを見つけた。
「俺さぁ、ずっと運転しっぱなしじゃん? 途中サービスエリアがあったら、メシ食って少し仮眠していい? まぁ二時間くらい寝られたら充分だし」
「もっ……もちろんいいよ。何かずっと運転させっぱなしで、そこまで気が回らなくて……ゴメン……」
午前中から、ずっと男にステアリングを握らせた状態に、申し訳なく思った優子は、ペコリと頭を下げた。
「いや、いいんだけどさ。その代わり、と言っちゃぁアレなんだけど……」
前方を見据えた拓人が、彼女の横で、優艶な雰囲気を纏わせたように感じるのは、気のせいだろうか?
「なっ……何よ……」
「…………」
男は逡巡しているのか、黙ったままステアリングを握っている。
「…………抱かせて」
車のモーター音が低く響く中、拓人は芯の通った声音で、優子にポツリと零す。
軽いノリで優子を犯してきた男から、真面目に誘われた彼女の鼓動が、大きく打ち鳴らされた。
「やっと見つけた。ここで休憩していいか?」
「あ…………うっ……うん」
広大なパーキングエリアを見つけた拓人が、スピードを落として、車を滑り込ませた。
空いているスペースに車を止め、二人はフードコートへ向かう。
冷やし中華を黙々と食べながら、優子は、拓人に言われた事を反芻させていた。
真剣な声色で、男が『抱かせて』なんて言ってきたのは初めての事。
(いつもヤるって言ってる男に……そんな風に言われたら……調子が狂うし……)
彼女は、豪快に麺を啜っている男に視線を移す。
最後のひと口を食べたのか、拓人は完食すると、フゥッとため息をついた。
「ごちそうさま。って…………あんた、食わないの?」
優子の箸の進み具合を気にしたのか、男に話を振られる。
「ううん……食べるよ……」
彼女は、曖昧に笑みを浮かばせつつ、食事をするのだった。