テラーノベル
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車に戻った二人。
「悪いな。ちょっと寝るわ。二時間経っても起きなかったら、起こしてくれるか?」
「うん」
拓人は、さっそく運転席のリクライニングを倒し、瞳を閉じると、優子は手持ち無沙汰になってしまい、フロントガラスの向こう側に視線を移した。
夜の闇に煌々と明かりが照らされている、広いサービスエリアのパーキングスペースは、運送業の大型トラック、乗用車が点在している。
人もまばらで、どことなく寂しさを漂わせている雰囲気なのは、平日の夜だからか。
(っていうかさ…………アンタが寝てる間、私は何をしてろっていうのよ……)
静かに寝息を立てている男へ、優子は眼差しを辿らせる。
(それにしても、この男…………寝顔も意外とイケメンじゃない……?)
切れ長の奥二重で、冷たさと色気を持ち合わせている顔立ちの男が、今は穏やかな寝顔を晒している。
「…………まったく。何が『抱かせて』よ。人の事、散々ヤリたいようにヤッてきた男の言うセリフじゃないでしょ……」
彼女は、人差し指で、男の引き締まった頬に、ツンと触れる。
「……ん……」
優子が拓人の頬に触れたせいか、男は、鼻に掛かった寝息を零すと、小さく身じろぎさせた。
「私も……少し寝よう……」
何もない場所に放り込まれたような心境の彼女は、退屈になったのか、前を向いて瞼を閉じた。
「……ろよ。おい…………おき……ってば……」
右腕を揺さぶられている感覚に気付いた優子が、ゆっくりと瞳を開いていく。
「……ん…………ん? あっ…………え!?」
彼女が身体をビクっとさせながら、運転席を見やると、ジト目を向けている拓人と視線がかち合う。
「俺、あんたに頼んだじゃん。二時間経っても起きなかったら起こして、って。頼まれたヤツが頼んだヤツに起こされて、どうすんだよ。まぁ……あんたも、ロングドライブで疲れてたんだろうけど」
まだ寝ぼけている優子を、男が苦笑している。
「ごっ……ゴメン。退屈過ぎて、寝ちゃったよ……」
「俺も少し寝られたからスッキリした。じゃ、東京に向かうか」
「ちょっ……まだシートベルトしてない!」
拓人がリクライニングを元に戻して、シートベルトを装着させると、彼女も慌てて、それを締める。
「出発するぞ」
拓人がシフトレバーをドライブに入れると、黒いセダンは、漆黒の中に向かって走り出した。
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