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遅くなりましたー!
暗い部屋、赤い手、冷たい塊。
黄色い瞳の中に何かが渦巻いて消えた。
それが何だったのかは分からない。
寒い。そう思って吐いた息は何も描かれていないキャンバスのようだった。だが、誰かが筆をとる前に消えてなくなってしまった。
「ーーー。」
いつかの声が脳裏に焼き付いて離れない。死んだ人の声は1番に忘れるなんて話は真っ赤な嘘のようだ。
「ーーー。どうしたの?」
振り向くと俺と全く同じ顔があった。違いといえば少し俺の方が髪が真っ直ぐなことぐらいだ。双子。唯一の俺の家族。信用できる世界でたった一人の人間。
「何でもない。行こう。」
「うん。、、、ねえ。」
「なに?」
「いつまで私たちこんな生活続けないといけないの?」
「、、、、、、。」
言葉が出てこなかった。
「もう何日も歩いてる。ここがどこか分からないのに!もう何処にも行くとこなんてないのに何で!?もう嫌だよ!!」
せっかくの綺麗な顔は汚れて、綺麗だった黄色い髪も今は黒ずんでいた。
ポロポロと涙を流す片割れを見て胸が張り裂けそうだった。
「ごめん、、、」
そう言うしかなかった。
「私、もう嫌、、、」
膝をついて泣き始めた片割れに何もしてやらない自分を恥じた。
俺達は、家から逃げてきた。
そうでもしなきゃ、生きていけなかった。
最悪な父、使えない母。
それでも生まれたことを後悔しなかったのはたった一人の兄弟がいたからだった。
いつだって支え合ってきた。
あの日だって、そうだったんだ。
たった一人の生きる支えを助けたいだけだったのに、、、
いつだって握っていた手を汚した。
汚させた。
自分が憎い。
愛おしいーーーを俺は傷つけて汚した。
暑い夏の日。
クーラーがつかない部屋を飛び出して公園の日陰でいつものように馬鹿話をしていた。
「いつか絶対にこんなとこ飛び出してやる!」
「いーねー!賛成!!」
まだまだ日は沈まない。風だけが俺たちの世界を覗き込んでいた。
「どんな奴だってフルボッコだぜ!」
「まぁ私の方が強いけどね!」
「なんだって!?俺は手加減してんのー!」
ケンカではーーーに俺は勝ったことがなかった。いつだって本気でやっても最後は先に俺が倒れてしまう。
日が傾き、仲間だと思っていた風すらも家に帰れと俺たちを投げ出した。
「そろそろ、だね。」
「、、、うん。」
重い足を運びつつ家に向かった。誰もが俺たちを避けて通っては噂をする。
味方なんていない。いるなら今、
隣にいるーーーだけだ。
家に入る前、鉄が錆びたような、鼻を塞ぎたくなるような嫌な匂いがした。
「なに?」
「分かんない。」
静かに鍵のかかっていないドアを開けた。
「っっ!?」
廊下に広がるのは見慣れた赤。
それが血と分かるまでに時間がかかった。
「、、、逃げよう。」
隣で小さくつぶやいたーーーが俺の手を強く握りしめた。
「俺、見てくる。」
俺は、手を離した。
「な、何で?」
うろたえる兄弟を横目に靴のまま家に入る。
既に乾いた血を踏むと鼻がもげそうだった。
「なんで?いかないでよ、、、」
後ろからそう聞こえた。でも、俺は自分の好奇心を抑えられなかった。
血はリビングに続いていた。
ぐちゃっ
何かを
踏んだ
反射的に下を
見た。