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「 なぁなぁ!1個上に『 高嶺の花 』って呼ばれるほど綺麗な人がいるんだってよ! 」
入学して直ぐに聞こえてきたのは … クラスのヤツの会話。
白鳥沢に落ちて仕方なく来た烏野。
あまりうるさいのは好きじゃない。
「 知ってる知ってる!俺朝見たぞ! 」
興奮して話す奴らが耳障りでしかなかった。
こいつらは結局顔だけなんだ。
俺には関係ない話だな。
そう思って俺は机に伏せて眠った。
その日の放課後。
俺は体育館に向かった。
ずっと続けてきたバレ ー を高校でもやろうと、主将の澤村さんに頭を下げた。
そこで出会ったのはオレンジ頭のチビ。
こいつは中学の時にやりあったやつだ。
なんでこいつまで … 。
不満に思っていたが、運良くバレ ー 部の入部が決まった。
澤村さんから説明を受けている時、体育館の扉が開いた。
「 … っ!? 」
ひょこっと顔を出したのは茶髪の巻き髪に桃色の瞳の女だった。
今まで見た中で綺麗な人。
こんなに綺麗な人がこの世にいるのかと自分の目を疑うぐらいだ。
その女は真っ直ぐと俺たちに歩み寄って不思議そうに首を傾げた。
その姿さえも綺麗だと感じる。
「 あれ?この子達は … ? 」
澤村さんに声を掛けていた。
どうやら澤村さんと仲がいいみたいだ。
「 こちら、今日から入部することになった1年だ。この子は仮入部 」
澤村さんは丁寧に俺たちを紹介した。
その女の名前は花城澪と言うらしい。
2年5組でマネ ー ジャ ー をやっていると言う。
俺の隣にいた日向が大きく目を見開いていた。
「「 た、たた … 高嶺の花 … !? 」」
… は?
聞き覚えのある言葉に俺は驚きを隠せないでいた。
高嶺の花。それはクラスの奴らが話していた学校一のモテ女。
誰もが目を奪われると言っていたのを思い出し、納得した。
確かに美しい容姿をしている。
これで惚れないやつはいないだろう。
日向の言葉を聞いた花城さんは不思議そうにしていた。
まるで自分が可愛いことを自覚してないように。
花城さんは澤村さんに言われ、女子3人で体育館を出ていった。
「 いやぁ … まさかあの高嶺の花がマネ ー ジャ ー だなんてなぁ 」
ニヤニヤと浮かれたように話す日向が気持ち悪い。
俺はさっさと練習を始めた。
☆.*゚•*¨*•.¸♡o。+ ☆.*゚•*¨*•.¸♡o。
あれから1週間が経った今日。
放課後練が終わりいつも通り帰ろうとしていた矢先、田中さんと西谷さんが「 ジャンケンして負けたやつはネットとボ ー ルの片付けな ~ 」と言って強制的にジャンケンに参加させられた。
結果は俺の1人負け。
まさかこんなに直ぐに勝敗が決まるとは思わなかったが、みんなが帰るところを見て直ぐに片付けに入った。
億劫に思いながらも俺がネットを片付けていると、横からひょいっと一緒にネットを片付けてくれたのは花城さんだった。
マネ業をしてるはずなのに綺麗な手で手際よく片付ける姿が不思議とかっこよく見えた。
「 影山裙 … ? 」
流石に変に思われたのか、花城さんは不思議そうにこっちを見た。
気持ち悪かったよな。
そう思った俺は直ぐに目を逸らしてネットを片付けた。
2人で倉庫に入ってボ ー ルを拭いて片付けていた。
俺はふと、花城さんをじっと見つめた。
綺麗な横顔から目が離せないと同時に、なんで片付けを手伝ってくれているのかが疑問で仕方がなかった。
花城さんは田中さんに「 教室に忘れ物しちゃったみたいっ 」と言っていたのに、教室に行くことなく真っ先に俺のところにやってきた。
無意識に見入ってると、花城さんは俺が見ているのことに気づいて自分の頬を触った。
「 え、えっと、何か付いてるかな … 」
ほのかに頬を赤く染めて目を逸らす姿にドキッと胸が高鳴る。
不整脈 … ?
よく分からない感情に無視をして、俺は勇気をだして花城さんに声をかけた。
「 あのっ 」
花城さんはビクッと肩を震わせたあと、チラッと俺を見た。
その時に目が合い、話すなら今しかないと思った。
「 どうして … 手伝ってくれるんすか? 」
そう聞くと、花城さんは目を丸くしてゆっくりと口を開いた。
「 わ、私は … お片付け1人でするの大変だからお手伝いしてるだけっ、迷惑だったかな … っ? 」
その言葉に酷く困惑した。
そんなことを言うような人間がこの世に居ると思わなかったからだ。
こんな出会って1週間で1度も話してない後輩に、こういう風に思う人なんてきっとこの人だけだ。
俺なら無視して帰ってる。
俺は … その時に気づいた。 言うべきだと。
中学の時にひたすら強くなるために練習を詰め込んだ結果、トスを上げた先には誰1人としていなかった。
そんな過去を花城さんに言った時、花城さんはきっと、絶対に否定しないと思った。
「 俺 … は … 」
話そうと何度も口を開けては閉じてを繰り返す。
でもやっぱり話すのは怖い。
花城さんに、幻滅されると思ったから。
☆.*゚•*¨*•.¸♡o。+ ☆.*゚•*¨*•.¸♡o。
翌日。俺はいつも通り朝練の1時間半前に体育館に着いた。
トスの練習をして、もっと強くなって、強いやつに会いたいからだ。
俺はそっからひたすら練習した。
練習すること1時間後。
休憩なしでぶっ通しで行う練習にも、そろそろ限界が来ていた。
でも … ここで辞めたらきっと後悔する。
「 … くそっ、こんなんじゃ全然ダメだ。もっと、もっと強くならないと … ! 」
もっと高く、そして正確に。
完壁なトスを上げないと強くなんてなれねぇ。
もう1度と思ってボ ー ルを投げた時。
ガチャッと体育館の扉が開いた。
戸惑った俺はボ ー ルを落とした。
「 __ 花城 … さん、? 」
そう声を掛けると、悲しそうに眉を下げて、今にも泣きそうな顔をした。
「 … っ、 」
驚いているけど、悲しそうにも見える。
俺は状況が飲み込めないままじっと花城さんを見つめた。
「 か、影山 … 裙。何してるの? 」
沈黙を破ったのは花城さんだった。
そんな当たり前のことを聞く花城さんを前に、俺は正直に答えた。
「 練習です。上手くなりたくて … 」
小っ恥ずかしいと思いながらもそう言うと、花城さんはますます顔を歪めた。
なんでそんな苦しそうな顔をするんだ … ?
不思議でたまらなかったが、俺が口を開くよりも先に花城さんが口を開いた。
「 ねぇ。影山裙。 何かあったの、? 」
花城さんの言葉に一瞬戸惑いを見せた。
花城さんが何を聞こうとしているのか、何の話をしているのか。
俺は何故か分かってしまった。
「 … っ、なん … っで、 」
なんでわかったんだ … ?
俺が昨日話そうとしたこと。
『 俺 … は …』
俺が … 言わなければならないこと。
「 … 俺は … 強くなって … それで、そしたら … みんな、離れて … 」
言うなら今しかない。
幻滅される覚悟でそう口にした。
花城さんの顔さえ見れなくなっていた時、体が暖かいものに包まれる感覚になった。
暖かくて落ち着く。
涙が溢れそうだった。
「 花城 … さん … ? 」
それでも震える声を振り絞ってそう言った。
「 もう大丈夫。大丈夫だよ。影山裙 」
「 … っ、 」
なんで … 。
「 強くなくたとしても、影山裙は影山裙だよ 」
なんでこんなに優しいんだ。
「 はな … しろさっ、 」
「 頑張ったね。話してくれてありがとう 」
触れたことのない優しさに胸が暖かくなった。
「 泣いていいんだよ 」
そう言って頭を撫でてくれる。
こんなにも人が暖かいなんて知らなかった。
こんなにも人は優しさをもってるなんて。
1粒の涙が花城さんの肩を濡らしていく。
そしたら今度は涙が止まらなくなった。
信じられないぐらい泣いた。
花城さんの前で泣くのが恥ずかしかったけど不思議と安心して泣くことが出来たんだ。
キリが悪いところでごめんなさい … っ。
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