テラーノベル
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しん、と静まった玄関。
桃は、
しばらくその場から動かなかった。
腕の中の重みを、
確かめるように。
「……リビングに行くか」
小さく呟いて、
翠を抱き直す。
廊下の電気が、
ひとつ、またひとつと灯る。
足音が、
ゆっくり、奥へ進んでいく。
リビングの扉の向こうから、
かすかな物音。
待っている気配。
桃は、
一度だけ目を閉じて、
深く息を吸った。
そして、
リビングのドアノブに手をかけた。
桃は、翠をそっとソファに寝かせてから、
一度だけ深く息を吸った。
「……赫」
リビングにいた赫が、びくっと肩を揺らす。
「……どした?」
その声は、
まだ不安と緊張が抜けきっていなかった。
桃は、言葉を選ばなかった。
選べなかった。
「学校から連絡があった」
赫の目が、
一気に見開かれる。
「……俺の、件?」
「うん」
短く、でもはっきり。
茈が、
赫の前にしゃがむ。
「お前をいじめてたやつら」
「全員、退学処分になる」
一瞬。
赫は、
理解できていない顔をした。
「……は」
間が空く。
「……たい、がく……?」
その言葉を口に出した瞬間、
赫の表情が、ゆっくり変わっていく。
驚き。
戸惑い。
それから——
「……ほんとに?」
声が、震える。
黄が、
優しくうなずいた。
「うん」
「もう、大丈夫だよ」
その一言で、
赫の肩から、
力が抜けた。
「……そっか」
しばらく、黙る。
それから、
ぽつり。
「……終わったんだな」
誰も、すぐに返事をしなかった。
赫は、
自分の手を見つめて、
小さく笑った。
「……俺さ」
「ずっと、俺のせいで家族に迷惑かけてるって思ってた」
「でも……」
「ちゃんと、守ってもらえたんだな」
その言葉に、
桃と茈は、
同時に胸を撫で下ろす。
「当たり前だ」
「家族なんだから」
赫は、
ほっとした顔で、
リビングを見回す。
そして、
ふと気づいたように聞いた。
「……翠にぃは?」
その名前が出た瞬間、
空気が、ほんの少し、揺れた。
「今、休んでる」
桃が答える。
「ちょっと……疲れてたっぽい」
赫は、
リビングの奥、
ソファの方を見る。
横になっている、翠の姿。
「……そっか」
でも。
その視線は、
翠から離れなかった。
胸の奥に、
言葉にできない違和感が、
静かに残ったまま。
コメント
1件
うああああぁ赫っちゃん視点久しぶり?初か?えでもほんとにうんいいねちょやばいほんとに言葉が出てこない(