瑠衣が筋張った首に腕を絡ませ、トロンとした瞳で侑を見やると、侑は彼女の唇を奪った。
「ううぅっ……んんんっ」
身体を繋げたまま、抱きしめ合いながら交わし合う濃厚な口付け。
全てがひとつになった状態に、濃茶の瞳から大粒の雫が滴り落ちた。
四年間娼婦だった瑠衣にとって、セックスは『仕事』だった。
しかも娼館に売り飛ばされた当時の彼女は処女、その日のうちに女風のオーナー、中崎拓人に純潔を捧げた。
拓人は無理矢理犯す事なく彼女を丁寧に抱き、初めての相手が強引に行為をする人ではなくて良かった、と瑠衣は思っているが、それは彼女の中で『仕事のひとつ』であり、彼とまぐわった事は後悔していない。
それ以降、父親が遺した借金を返済するため、多くのセレブリティたちと関係を結び続けている中、昨年の夏に大学時代の恩師、響野侑との再会。
彼は瑠衣に気付いていたようだったが、大学卒業間近に会った時と容貌が全然変わっていたため、彼女は暫くの間、侑だと気付かなかった。
互いの素性が判明してから、二人の間で止まっていた時の流れが緩やかに動き出し、新宿のホテルでの同伴、娼館の火災で侑の自宅に身を寄せている状態でも、侑とは仕事の延長のような身体の関係が続いた。
つい最近、互いの思いが通い合い、恋人同士となった二人が今、ベッドの上で愛が溢れるセックスをしている。
好きな男の人と結ばれた事が、こんなにも幸せに満ち足りた気持ちになるなんて、考えもしなかった事だ。
身体は既に穢れているが、瑠衣は侑に抱かれている事で、本当の意味で身も心も処女喪失できるような気がした。
「せんせ……」
唇を焦らすように侑が離すと、泣き笑いのような面差しで瑠衣は彼を呼んだ。
「…………どうした?」
彼女は涙で顔を歪ませつつ、はにかみながら小さく呟く。
「…………私……嬉しい。好きな男の人に…………愛している男の人に抱かれて……すごく嬉しくて……幸せ……。幸せ過ぎて…………何だか怖い……」
「…………幸せ過ぎて怖いと思うのなら…………瑠衣が……俺だけの事しか考えられないようにしてやる……」
侑がそう言うと、勁い腕が括れた腰を強く抱き寄せ、瑠衣の唇を奪いながら剛直を強く突き上げた。