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瑠衣が予約したのは、井の頭公園の近くにあるカフェだった。
白を基調としたログハウスを思わせる外観からは、仄かに甘い香りが漂い、美花の鼻腔をそっと撫でていく。
「うわぁ……いい香り……」
「ここのお店、フレンチトーストが美味しくて評判のお店なんですよ。思わず予約しちゃいました」
瑠衣が笑みを滲ませながらピースサインをすると、美花も釣られて口元を緩める。
二人がカフェのスタッフに案内されたのは、店内の一番奥にある個室タイプの席。
大きな窓からは、深みのあるブルーに染まった空が映し出されている。
美花は、数種のベリーとホイップクリームのフレンチトースト、瑠衣は、チーズとハムがサンドされたフレンチトーストを、それぞれランチセットでオーダーした。
「では、改めて。今日は美花さんにお会いできて嬉しいですっ! 乾杯!」
「ランチのお誘い、ありがとうございますっ!」
ソフトドリンクを手にして、グラスをカチンと合わせ、食事を楽しむ女子二人。
瑞々しいベリーの甘酸っぱさと、濃厚なホイップクリームが口の中で混ざり合い、思わず顔を綻ばせる美花。
「うわぁ……甘くて、とっても美味しいですっ」
「良かった! 私、フレンチトースト、大好きなんですよぉ」
瑠衣と二人で会って話すのは、これが初めてだし、美花は会う直前まで密かに緊張していたのだけど、気付くと、リラックスしつつ瑠衣との時間を満喫している。
瑠衣の、どこか茶目っ気のある仕草が、美花の心を和ませてくれているのかもしれない。
「そういえば、瑠衣さんって、九月にご結婚されたばかりなんですよね?」
美花がアイスティで喉を潤しながら、濃茶の瞳に視線を辿らせる。
「そうなんです。色々ありましたけど…………やっと……大好きな人の奥さんになれました」
瑠衣は穏やかな表情で、窓の隅に映る、紅葉し始めた街路樹に視線を向ける。
「あのぉ…………差し支えなければ、瑠衣さんとご主人の馴れ初め話……聞いてもいいですか?」
「もう美花さん! せっかくお近付きになれたのに、堅苦しく話すのはやめましょう! 美花さんと私、同学年だし、普通に話してくれていいし、何ならルイルイって呼んでくれた方が嬉しいし、私も美花さんの事、『みかリン』って呼ぶし!」
「わぁ! あだ名を付けられたの、初めてで何気に嬉しいなぁ……!」
瑠衣からの提案に、美花は瞳に弧を描かせ、両手を合わせてパンッと鳴らす。
「じゃあ…………るっ……ルイルイの恋バナ、聞いてもいいかな?」
「もちろんっ」
美花は、ぎこちなく言葉を崩して言ってみたものの、瑠衣から語られた夫とのラブストーリーは、想像を遥かに突き抜けるものだった。