テラーノベル
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潮風が、やさしく頬をなでる。
〇〇は、看護師に付き添われながら、ゆっくりと砂浜を歩いていた。
「今日は少し歩けそうだね」
「…はい」
小さな返事。
視線は、ただ波を追っているだけ。
寄せては返す、同じリズム。
何も感じないのにはずなのに…
なぜか、胸の奥が少しだけザワつく。
「…ここ、よく来るんですか?」
〇〇がぽつりと聞く。
「うん、〇〇ちゃん最近ここ好きみたいでね」
「…好き、なんですかね」
自分でも分からない。
でも、ここに来ると
“何か”が近くにある気がする。
その頃、少し離れた場所。
撮影の合間に、海を見つめる
目黒蓮の姿があった。
「目黒さん、次スタンバイ!」
スタッフの声に「はい」と返しながらも、視線は無意識に人混みを探してしまう。
「……いるわけないか」
小さく呟いた、その時。
風が強く吹いた。
〇〇の帽子が、ふわっと飛ばされる。
「あ……」
とっさに追いかける〇〇。
看護師の制止も聞こえないまま、少し足を速める。
帽子は砂浜を転がり、誰かの足元で止まった。
「…あ」
拾い上げたその人と、声が重なる。
〇〇が顔を上げる。
目が、合う。
ーー止まる瞬間。
「…〇〇?」
震える声。
目の前にいるのは、間違いなく
ずっと探していた人。
でもーー
「…あの、帽子…」
差し出されたそれを、〇〇は受け取る。
丁寧な言葉。
それだけ。
目黒蓮の手がわずかに震える。
「…俺、わかる? 」
〇〇は、困ったように眉を寄せる。
「…誰ですか?」
その一言で、現実を突きつけられる。
その時。
看護師が駆け寄ってくる。
「〇〇ちゃん!急に走ったら危ないよ!」
〇〇は少し息を整えながら、
「…すみません」と答える。
看護師は目黒蓮に気づき、軽く頭を下げる。
「すみません、この子…」
「あの!〇〇は、病気なんですか?」
目黒蓮は、看護師が言い終わる前に言う。
「…〇〇ちゃんの関係者の方ですか?」
「はい」
短く、でもはっきりと答える目黒蓮。
「…寒い」
少し震える〇〇。
「病院戻ろっか」
〇〇は、コクリと頷く。
「〇〇ちゃんについて、お話したい事がありますので、病院にいらしてください。」
看護師は、目黒蓮に小さく言う。
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