この作品はいかがでしたか?
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実在の地名、組織名、競走馬などとは一切の関係がありません。
あと、時系列ブレブレです。
それでも良い人はどぞ
上場番号、325番。
リリィの1993。
オス、白毛、12月11日産まれ。
父はシンボリルドルフ。セリ市史上初の白毛馬でございます。
では参りましょう。
150万円スタートです。
「白毛!?なんとも珍しい……」
思わずそう口に出す。
白毛の馬……画面内では見たことあるが、生で見ることは初めてだ。
「それより、色々と異常だね。12月産まれなんて。超早生まれじゃん。来年デビューか…クラシックは厳しそう」
「小さい……でもな。すぅっごい良血。でもすごい安い。トウカイテイオーの全弟か〜……」
隣にいる女性は百合園香蓮。“ユリノ”の冠名で知られる馬主で資産家だ。
「希少だから競りかけてくる人もいそうだけど……ちなみに所持金は?」
「二億」
「うわ、金持ち。買う?」
香蓮は少し悩んでいた。競りかけてくる声はしない。意外だ。
『150万〜150万ですよ〜!誰かいませんか〜』
「…………150万程度ならいいと思うけど……」
「走らなそうだよね〜」
普通に考えて期待は出来ないだろう。小さいし、足も細い。良血だけど、牧場側もこんな値段にするほど……。
「…………どうするー?」
「…12月11日の誕生花、百合の花だ」
「なにそれ。運命?ちょうど白いし……」
香蓮はまだ少し悩んでいる。
少したって、立ち上がって言った。
「気に入った。1500万!」
『!1500万出ました!次は1600〜1600出ませんならこの馬はお嬢さんのものですよ〜』
辺りがざわつく。
「えぇ!?いいの!?あれに1500万も使うなんて………」
「さすがに出ないっしょ。あの馬にこれ以上の額──」
「───2000万」
香蓮と私は一斉に振り返った。
後ろから声がした。図太い男の声だ。
「はぁ!?あの人、さっき尾花栗毛の馬2億で買ったばっかだよ!?」
「………3000万!」
「3100」
3100、3200、と100万ずつ増えていく。
そろそろ諦めなよと私は注意したが、香蓮は無視して競り続けた。
「っていうかな、あの白毛は二階堂さんに買って貰った方がいいだろ」
「ユリノで活躍した馬なんて滅多に見ねぇよなぁ……二階堂さんの馬は安定感が出てくるからな〜」
「…………っあ〜!」
痺れを切らしたのか、香蓮はイライラしたような顔を見せた。
そして───
「………は?」
思わずそんなに声が出た。二階堂さんも驚いた様子を見せる。
元の値段の100倍だよ…?何考えて……………。
カンカンカンッ。
『リリィの1993、1億5000万円で落札です』
その馬は静かに香蓮を見ていた。
「何考えてんの!?この馬にあの額………」
「………ごめん…」
香蓮はしょんぼりとした様子を見せた。
香蓮の隣にはさっきの白毛が静かに立っている。
「赤字確定じゃん………どうせまた───」
「…思い出させないで………」
「…………」
白毛は顔を香蓮に寄せてブルッとひとつ鳴いた。
「名前はどうすんの?」
「決まったら知らせる。今回もよろしくね」
「また私のとこに預けんの?別にいいけどさ〜…」
しばらく黙って、香蓮は白毛を見つめながら、手をギュッと握りしめた。
白毛の性格は大人しいのか、変わらず香蓮に顔を擦りつけている。
「あだ名だけは決めとくわ。名前決まるまでお前はシロな」
「絶対適当でしょ。犬みたい」
「ははっ。バレたか〜」
そう言って後頭部を掻く。
「まぁいいや。よろしくね如月調教師」
「ハイハイ……」
───数週間後。
美浦トレーニングセンター。
「おっ来たな。おーい百合園“オーナー”!」
「オーナーってつけんのやめて……」
香蓮は照れくさそうに言った。
そう言えばあれだ。肝心なやつ決まったんじゃん。
「名前決まったんでしょ〜?早く言いなよ〜」
「様子みてからね。シロは?」
私はちぇーと言いながらも、香蓮を外に連れていく。
なんたって今は放牧中だ。ここにいるわけない。
「………仲良さそうだね」
香蓮は他の馬と戯れるシロを見て、安心したように言った。
シロのいるところから数十メートル離れているが、見つけるのは案外簡単だ。なんたって白いから。
「馬体は成長してる?」
「うん。他の馬に比べたら小さいけどね」
「馬体重は?」「365前後。まだこれからだ」
他にもシロの話をした。
他の馬との仲や、馬房での様子など。
香蓮は真剣に聞いていた。
「厩務員の五十嵐さんはいっつもシロの馬体綺麗にしてくれるよ。砂ひとつ残さないように、だって」
「ふふっ。頼もしいなぁ」
そう言って、香蓮は笑顔をこぼした。
「………そろそろ名前言ってよ」
「えぇ〜」
早く早く、私は急かす。
そして、香蓮はやっと口を開いた。
「……………ユリノテイオー。いい名前でしょ」
…………。
そういう彼女の横顔が、美しく見えた。
「………何見てんの」
「いや。なんでもない………ユリノテイオーね、いい名前じゃん。由来は分かりきってるけど」
「話すだけ話させてよ」
シロを───ユリノテイオーを見ながら話し出す。
「テイオーの部分は、やっぱりシンボリルドルフとトウカイテイオーから。父や兄を超えるような、そんな馬になって、“白い帝王”として、競馬界の頂点に君臨して欲しい」
香蓮の髪が風で揺らぐ。
ユリノテイオーは他の馬と戯れていた。
走ったり、一緒に寝っ転がったり。
「ねぇ、ユリノの冠名の由来知ってる?」
「え?苗字から取ったんじゃないの?」
「それもそうだけどさ」
香蓮はニコニコと笑っている。
「ユリノ………私の苗字の百合園から取ってるけどね。百合の花言葉知ってる?」
「知らない」
「純粋、無垢。白い百合の花言葉は威厳、純潔。そんな百合みたいに、可憐で、強くて、印象に残るような、そんな馬になって欲しいから。……でも──」
「────全部、私の前で殺されてった」
約一年後。
京都競馬場。
「テイオー、頑張れよな〜。頑張って勝ってくるんだぞ〜」
テイオーの体を軽くぽんぽんと叩く。
最終的に仕上がった馬体は384キロ。他の牡馬に比べると100キロ近く小さいが、この馬にしてはよく仕上がった方だ。
この日のために切り揃えたタテガミに尻尾。切ったのは五十嵐さんだけど。
「百合園さん来ないなぁ。せっかく綺麗に仕上がってるのにな。如月さん」
「え?あぁ、もうちょっとできますよ」
「っていうか、本当に1400で良かったのか?血統的に中距離馬だろ」
「えぇ。いいんです。マイル以下を追走させられる経験は馬を逞しくさせると思いますから」
隣の五十嵐さんははぁ、と頷いた。
五十嵐さんはいかにも普通の中年男性って感じだ。
「まぁ俺タバコ吸ってくるわ。百合園さん来たら先行ってて」
「はーい」
ユリノテイオーはいつも通り静かだ。
静かに立っている。
「………テイオーの鞍上は期待の大型新人漆瀬騎手だから!多分メンバー的にも勝てるでしょ!JRA初の白毛の新馬勝ち馬になれるかも─────」
──ギュ。
後ろから、抱きつかれた感覚があった。
後ろを振り返った。
……香蓮?
「かっ、かか香蓮!?おはよう!?」
「………」
香蓮はしばらく黙って、やっと口を開いた。
「……目の前で、テイオーが殺される夢見た」
「…………また?」
「もう限界………やだ………」
苦しそうに言った。
「………………正夢じゃなきゃいいね」
苦しくなって答えた。
『さぁ最後の直線!』
『まだ先頭はオクシデントフォー!後続との差は3馬身!ここから届くか!?』
『いや!?大外から突っ込んできたユリノテイオー!白毛の馬体が弾んでユリノテイオー飛んできた!!』
『ユリノテイオー並びかける!オクシデントフォーに並びかける!!』
『ユリノテイオー僅かに抜いた!勝ったのはユリノテイオー!』
『白毛初!見事に新馬戦を勝ち抜きました!!』
コメント
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初コメ失礼します。トウカイナチュラルですが、同じ馬名の馬が居ます。故意でないのは分かっているので、主様を攻めるわけではありませんが、オリジナル競走馬を作るときは一度その馬名を検索したほうがいいですよ
ユリノの新馬戦か〜!ユリノの由来がわかったよ(*^^*)
競馬はマルス知識ですわ〜