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#普通
野々さくら
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ありあ
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それから数日後。
銚子と多摩雄へのサプライズ計画は、誰にも気づかれることなく少しずつ形になり始めていた。
ある朝、信愛はリビングで新聞を読んでいた両親へ声を掛ける。
「ねぇ?お母さん?お父さん?」
銚子が顔を上げる。
「なに?どうかした?」
信愛は何気ない口調を装いながら笑った。
「たまにはさ、二人でデートでも行ってきたら?」
銚子は目を丸くする。
「なによ急に」
不思議そうに信愛を見つめ、くすりと笑った。
「珍しいわね、信愛がそんな事言うなんて」
さらに首を傾げる。
「どんな風の吹き回し?」
信愛は慌てて手を振る。
「いや、深い意味はないけど、たまには
良いんじゃないかなぁ〜と思っただけ」
銚子は細めた目で娘を見つめる。
「何か企んでんじゃないの?」
「人聞きの悪い事言わないでよ」
信愛が頬を膨らませると、銚子は笑みを漏らした。
「ふふふ、冗談よ」
そこへ多摩雄も会話へ加わる。
「なぁ、信愛もこう言ってくれてるし
たまには良いんじゃないか?」
銚子は肩をすくめる。
「まぁ、そうね」
信愛はすかさず切り出した。
「なら来週の土曜日なんかどう?」
銚子はすぐに違和感を覚えたように眉をひそめる。
「日にちまで指定してくるわけ?
なんか、ますます怪しいわね」
信愛はぎこちなく笑う。
「そ、そんな事ないよ」
多摩雄が豪快に笑った。
「まぁまぁ銚子、そんな疑うなよ(笑)」
穏やかな表情で妻を見つめる。
「信愛がこう言ってくれてるんだから
お言葉に甘えようじゃないか、な?」
銚子も観念したように微笑む。
「まぁ、そうね」
ふと時計を見ると、信愛へ視線を向けた。
「というか信愛、そろそろ 行かなきゃ遅刻じゃない?」
信愛は慌てて壁の時計を見上げる。
「あ、いっけない」
鞄を掴み、玄関へ駆け出した。
「行ってきまーす」
玄関の扉が閉まる音が響く。
その後ろ姿を見送りながら、銚子は苦笑した。
「まったく相変わらず落ち着き無いんだから」
◇ ◇ ◇
その日の昼休み。
部室では、美月を囲んで部員たちが楽しそうに談笑していた。
そこへ信愛が駆け込んでくる。
茜がすぐに声を掛けた。
「信愛?どうだった?来週の土曜日の件」
信愛は親指を立てる。
「うん、さりげなくデート提案しといた」
少し得意げに笑いながら付け加えた。
「微塵も疑われてない」
一拍置いて心の中で呟く。
(多分だけど・・・)
「さくらが満足そうに頷く。
「ならバッチリね♬」
焔垂も計画を確認する。
「会場も小諸さんの別宅を使わせてくれるって話だし」
茜は嬉しそうに笑う。
「料理だってウチらの
お母さんが力合わせて準備してくれる」
朝陽も頷いた。
「あとはデート終わりに二人を
会場へ連れて来るだけですね!」
信愛はしみじみと呟く。
「なんか色んな人に良くしてもらって申し訳ないな
私たちってつくづく人に恵まれてるよね」
その言葉に、美月は静かに首を横へ振った。
「それは違うわよ、白縫さん」
信愛がきょとんとする。
「え?」
美月は優しく微笑む。
「あなた達が人に恵まれてるんじゃなく
あなた達の活躍が人の輪を紡いだのよ」
信愛は胸が熱くなるのを感じた。
「美月先生・・・」
美月は穏やかな声を続ける。
「この街にはあなた達に救われた人や霊が大勢居る」
少し照れくさそうに笑う。
「まぁ、私もその救われた一人なんだけどね」
部室に静かな空気が流れる。
美月は皆を見渡し、ゆっくりと言った。
「だからこれは皆からあなた達に贈る対価よ
ありがたく受け取りなさい」
信愛は真っ直ぐに頷いた。
「はい!」
◇ ◇ ◇
そして時は流れ、約束の土曜日。
玄関先で信愛は笑顔を浮かべる。
「なら二人とも♬今日は楽しんできてね♬」
多摩雄は笑顔で頷く。
「ああ、そうさせてもらうよ」
銚子は何か言いかける。
「晩御飯までには──」
しかし信愛は慌てて遮った。
「いいから♬いいから♬晩御飯の
ことなんて気にしなくて良いから♬
さあ♬行った♬行った♬」
銚子が何か言いかけるたびに言葉を遮り、半ば押し出すように送り出したおかげで、ようやく二人だけの時間を作ることができたのだ。
玄関の外から銚子の呆れた声が聞こえる。
「はいはい、分かったから」
その隣で多摩雄が笑う。
「なら、行ってきます」
信愛は満面の笑みで手を振った。
「行ってらっしゃい」
並んで歩き出す両親の背中が角を曲がって見えなくなるまで見届ける。
玄関の静けさが戻ると、信愛はポケットからスマホを取り出した。
画面に表示された時刻を確認し、小さく息を吐く。
「もう9時か・・そろそろ行かなきゃ」
計画開始まで、あとわずか。
ここからは、自分たちが準備してきたサプライズを成功させるだけだった。
信愛は急いで準備し、哲哉の別宅があると言う田園調布へ向かった。
◇ ◇ ◇
家を出た銚子と多摩雄は、穏やかな朝の街を車で走っていた。
助手席の窓から流れる景色を眺めながら、銚子はふっと微笑む。
「なんかデートなんて久しぶりな気がするわ」
運転席の多摩雄も笑い返した。
「あはは、だな」
しばらく他愛ない会話を交わした後、銚子が尋ねる。
「何処か行きたいところある?」
多摩雄は少し考え込む。
「うー・・ん」
ハンドルを軽く握り直しながら呟いた。
「そうだな~・・・」
その時、銚子が何かを思い出したように声を上げる。
「あ!そうだ!」
嬉しそうに身を乗り出した。
「あそこ行きましょうよ、渋谷」
それを多摩雄は懐かしそうに目を細める。
「渋谷か~♬」
遠い記憶を思い返すように笑った。
「若い頃はよく二人で行ってたよな」
銚子は頷き、少し照れたように笑う。
「プリクラ撮りましょうよ♬久しぶりに♬」
多摩雄は思わず吹き出した。
「あはは、いいな、プリクラ♬」
そして頷きながら言う。
「なら、とりあえずの目的地は渋谷だな」
そうして車は、思い出の街へ向かってゆっくりと走り出した。
コメント
1件
おおお!!309話も読了だよ〜😭💕 信愛が両親にサプライズ計画を仕込むの、もうドキドキが止まらなかった!!特に「あなた達の活躍が人の輪を紡いだのよ」って美月先生の言葉、めっちゃ胸に刺さった…!二人のデートの行き先が渋谷ってのも、なんか学生時代の甘酸っぱい思い出が蘇ってきてエモすぎるよ🥺💞 このサプライズ、絶対成功してほしいし、二人のリアクションが待ち遠しい…!次回も楽しみにしてるね〜🌸✨