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#普通
野々さくら
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ありあ
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310話、読了!センター街のプリクラ回、めちゃくちゃほっこりしたわ…。銚子と多摩雄の夫婦デート、若い頃みたいに無邪気にはしゃぐ姿が微笑ましくて、思わず頬が緩んだよ。女子高生に「フリーのプリ機」教えてもらうシーンも、親切でいい子だなあって。で、最後の信愛からのメモ「田園調布に17時までに」って伏線が気になる…何が待ってるんだろう。終盤に向けてじわじわ来てる感じ、たまらん🔥
渋谷センター街。
銚子と多摩雄は久しぶりに、センター街に訪れた。
若い頃、毎週のように通った、青春が詰まった街。
流行に追われ、流行を追いかけ、若さそのものを消費していたあの頃を思い出すかのように、二人は街を散策しながら歩く。
多摩雄は周囲を見渡しながら感心したように呟く。
「様変わりした感じだけど、相変わらず人は多いな」
銚子も街並みを眺めながら頷く。
「ええ、ずいぶん来てなかったけど」
懐かしそうに微笑み、静かに続けた。
「不思議と熱気だけは当時のままって感じするわ」
「あはは、確かにそうだな」
多摩雄の返事に、銚子は人混みの先へ視線を向ける
「それより早く行きましょ♬
プリクラよプリクラ♬」
その笑顔は、まるで何十年もの時を飛び越え、若かった頃へ戻ったような無邪気さに満ちていた。
銚子は多摩雄の手を握ると、そのままセンター街を軽やかに駆け出す。
「あはは、慌てるなよ」
多摩雄は笑いながら後を追う。
「時間はたっぷりあるんだから」
そして楽しそうに肩をすくめた。
「まったく、こういう所は
昔とちっとも変わってないな」
やがて銚子はゲームセンターの前で立ち止まり、嬉しそうに指を差した。
「ほらあったわよ♬プリクラ♬
早速撮りましょうよ♬」
そう言って小走りで店内へ入ろうとしたその時、多摩雄が足を止める。
「いや、待て!」
振り返った銚子が不思議そうに首を傾げた。
「何?どうかした?」
多摩雄はプリクラ機の横に貼られた小さな注意書きを指差す。
「これ・・女性専用って書いてあるぞ
いいのか? 俺が一緒に使って」
銚子は目を丸くし、慌てて注意書きを確認する。
すると確かに、小さく「女性専用」と書かれていた。
「まあ! 本当!」
多摩雄は苦笑いを浮かべる。
「今はプリクラにも女性専用があるんだな」
「知らなかった・・・」
銚子は困ったように辺りを見回した。
「他にあるかしら?」
その様子を見ていた一人の女子高生が、おずおずと声を掛けてくる。
「何か困り事ですか?」
銚子は少し驚きながら振り返った。
「え?」
「いや、何か困ってる雰囲気だったんで」
多摩雄は柔らかく笑う。
「あはは、いやね、久しぶりに夫婦で渋谷に来てね」
女子高生は目を輝かせた。
「デートですか?」
銚子は照れくさそうに笑う。
「ふふふ、そうなの」
多摩雄も事情を説明した。
「久しぶりにプリクラでも撮ろうかと思ったんだけど
女性専用って書いてあったもんだから驚いてたんだよ」
女子高生はすぐに思い当たったように頷く。
「あ、あっちのゲーセンにフリーのプリ機ありますよ」
「フリーって?」
「性別縛りが無いプリ機のことを
フリーってウチら言ってるんです」
「ああ、なるほどね」
女子高生はにっこり笑った。
「案内しましょうか?」
「いいの?」
「はい! せっかくですから」
「助かるわ」
「ありがとうね」
女子高生に案内され、三人は少し歩いた先のゲームセンターへ向かう。
「ここです」
女子高生が指差した先には、性別を問わず利用できるプリクラ筐体「Lulume」が並んでいた。
「随分と可愛いプリクラね」
「自然に盛れるから皆に人気なんですよ」
「わざわざありがとうね」
「デート楽しんでくださいね」
そう言い残すと、女子高生はどこか満足そうな笑顔を浮かべ、人混みの中へ消えていった。
銚子はその後ろ姿を見送りながら微笑む。
「親切な子が居て助かったわね」
多摩雄も笑って頷いた。
「あはは、まったくだな」
銚子は改めてプリクラ機へ目を向ける。
「なら早速撮りましょうか」
「ああ」
二人は顔を見合わせ、昔と変わらない笑顔のままプリクラ機の中へ足を踏み入れた。
◇ ◇ ◇
プリクラ機から出てきた銚子は、満足そうに写真を眺めながら笑った。
「あはは、可愛く撮れたわよ」
多摩雄は興味津々に身を乗り出す。
「どれどれ」
二人が撮ったプリクラには、柔らかなピンク色の背景にハートが散りばめられ、「だいすき」「ずっと一緒だよ」と可愛らしい文字が添えられていた。
それを見た多摩雄は照れ笑いを浮かべる。
「あはは、なんか若返ったみたいだな」
銚子も写真を見つめながら感心したように言う。
「今は文字も書けるなんて進歩したわよね」
「確かにな、昔なんて
ただ撮るだけって感じだったもんな」
多摩雄は写真を指差しながら苦笑する。
「でもこの『だいすき』『ずっと一緒』ってのはな」
銚子はくすっと笑って首を傾げた。
「何よ、嫌だった?」
「いやいや、高校生カップルじゃ無いんだから」
そう言いながらも、多摩雄は照れ隠しに頬を赤くし、人差し指でこめかみをぽりぽりと掻く。
その様子が可笑しくて、銚子は優しく微笑んだ。
「いいじゃない」
「まあ、いいけどな」
照れたまま笑い返した多摩雄を見てから、銚子はふと思い出したように表情を引き締める。
「というか今朝、信愛が気になる事言ってたのよね」
「気になる事?」
「17時までにはここに来て欲しいんだって」
そう言うと、銚子は信愛から渡されていたメモを取り出し、多摩雄へ見せた。
そこには田園調布のとある住所が丁寧な文字で記されている。
「で、田園調布!?」
多摩雄は目を丸くした。
「なんであんな高級住宅街に?」
銚子は首を横に振る。
「いや、それが分からないのよ
ここに来てって言われただけだから」
「何かあるのかな?」
「さぁ・・・」
少し考え込んだあと、銚子は続ける。
「あと、お昼もあまり 食べ過ぎるなとも言われたのよね」
「なんか、サプライズでもしようとしてるのかな?」
多摩雄は期待を込めた声で言う。
しかし銚子はメモを見つめたまま、小さく首を傾げた。
「にしてもよ、田園調布なんて高級住宅街に
知り合いの家とかお店とかないじゃない?」
言葉の続きを飲み込み、多摩雄を見る。
「確かにそうだよな、どういう事なんだ?」
「まあ、とりあえず言われた通りに行ってみましょ」
そう言って銚子はメモを丁寧にバッグへしまう。
渋谷の賑やかな喧騒の中、二人はプリクラを大切そうに手に持ったまま、次なる目的地・田園調布へ向かうため歩き出した。
信愛がわざわざ指定した高級住宅街。
そこに何が待っているのか、まだ二人は知る由もなかった。