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「食事ができない状態が、しばらく続いて…………半月ほどで、体重が十キロくらい減って……。更に離婚の話し合いも、なかなか進まなかったストレスで、更に十キロ痩せて。一番太っていた頃から……二十キロほど減りました」
「トータルで二十キロ…………」
彼女の結婚生活が、体調に大きく影響を及ぼしていた事に、純は、何と言葉を掛けていいのか、分からなかった。
「元ダンナの不倫と、姑さんのダイエットの件で言われ続けて、半月で体重が十キロ落ちて…………病院は……?」
「一時的なものだろう、と考えて、病院は行きませんでした……」
「そうか…………大変だったんだな……。今は、食欲は大丈夫?」
純の問いに、微苦笑しながら答えてくれた恵菜に、却って申し訳なく思いつつ、彼女の体調を気遣った。
「はい。離婚したお陰で、食欲も戻りました」
彼女は、コーヒーカップを口に運び、フウッと大きく息をついた。
「谷岡さんの部下の奈美の結婚式と披露宴、私も招待状が送られてきたんですけど、その時、ちょうど離婚したばかりで。晴れの日に、離婚ホヤホヤの私が出席するのも、縁起が悪いな、と思って、欠席したんです」
思い返せば、本橋夫妻の挙式、披露宴の時、恵菜は見ていない。
(相沢さんが、あの夫婦の結婚式に出席してたら…………また違った未来があったかもしんねぇな……)
純は、『たられば』を想像して、遠くに眼差しを向けた。
「俺、あの夫婦の挙式で、部下の本橋と一緒に、バージンロードを歩いたんですよ」
純のひと言に、恵菜の表情がパッと明るくなる。
「え? そうだったんですか!? 見たかったなぁ……」
彼女が、ようやく明るい笑顔を咲き誇らせ、純の鼓動が大きく打たれた。
「奈美さんの夫が俺の中学の親友で、奈美さんは俺の部下。彼女の父親が他界していたので、二人の共通の知り合いって事で、バージンロードを一緒に歩く大役は、俺に白羽の矢が立ったんですよ」
「うわぁ……素敵なお話ですね……!」
恵菜は楽しそうに、純の話に相槌を打ちながら聞いてくれている。
「……いい挙式と披露宴だったんでしょうね……!」
「ええ。素晴らしかったです。彼女、余興の大トリで、ご友人と一緒にピアノを演奏してましたし」
親友の結婚式のエピソードを聞けた事が嬉しかったのか、恵菜は、物腰柔らかな笑みを纏っている。
(相沢さんの笑顔…………俺がもっと……花開かせたいよな……)
純は、いつかそんな日が訪れる事を願いながら、コーヒーを口にした。