テラーノベル
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影猫パーカー@最低週1投稿目標
4話〜文明は破壊者を呼ぶ〜
夜が明け、狼の遠吠えが響く。
5人は村長のクロシの協力を得て中央広場に村民を集めた。
リョウが大きく息を吸い込む。
「皆さん!お集まりいただきありがとうございます。 提案があってお集まり頂きました」
すかさずコウルが口を開く。
「もし作物が育たなかったりすれば、私たちは飢えに苦しむことになる。
狩を繰り返せば死傷者は必ず出る。今こそ皆さんの力を合わせてこの村を豊かにしていきませんか?そして、そのために私たちの指示に従っていただきたい!」
コウルが言い放った瞬間、広場に集まった村民たちの間に、ざわざわとした不穏な空気が広がった。
「指示に従えだと……? ふざけるな!」
「どこの馬の骨ともわからん旅人の言うことが聞けるか!」
「死傷者が出るのは狩人の宿命だ。それを他人の、しかも子供に指図されたくないね!」
当然の反応だった。
生きるか死ぬかの厳しい時代を必死に生きてきた大人たちからすれば、奇妙な服を着た若者たちの言葉など、ただの傲慢な言葉にしか聞こえない。
混乱と反発の波が、広場を包み込んでいく。
その時、一歩前に出たのはタカだった。
タカは反発する村民たちの目を真っ直ぐに見つめ、深く、丁寧に頭を下げた。
「皆さんの言う通りです。偉そうなことを言って本当にすみません。でも、僕たちは皆さんに死んでほしくないんです。先日の狩りの中でヤソガさんやゼクさんが、命に感謝して生きろ
、と教えてくれました。
その大切な命を、もっと確実に、安全に守る方法が、僕たちの育った場所にはあるんです 。
どうか僕たちに力を貸してください!」
タカの命を救いたいという必死の熱意。
そして、先日の狩りの実績。
村民たちの怒号が、少しずつ戸惑いの囁きへと変わっていく。
「……まぁ、あの熊を倒したのは事実だからな」
「お前たち、静かにせんか」
最後に声をあげたのは、村長のクロシだった。杖を地面にトントンと打ち付け、一同を見渡す。
「この旅人たちは、熊の肉を村に持って帰ってきてくれた。我らを飢えから救おうとする心に嘘はなかろう。わしゃ、この者たちの知恵に賭けてみたい。皆の者、力を合わせてやってみようではないか」
村長の言葉が決定打となり、村民たちは不器用ながらも、ようやく5人に協力することを承諾したのだった。
ーーそこから数ヶ月後の黄稲村の変貌は劇的だった。
「ではここから、あそこまで溝を作ってください」
現代のサバイバル知識を持つタカが主導し、川から畑へと水を引く効率的な水路を整備する。
猪の罠も生み出され、森に仕掛けられる。
コウルが緻密に計算した、等間隔で稲を植える「田植え」の技術は、特に村民たちを驚愕させた。
さらに、村の周囲には、巨大な二重の堀が作られた。
畑や新しく加わった仲間たちの住居がある外側の区域を「外地(ガイチ) 」。
村長の家や重要な倉庫、元々の居住区がある内側の区域を「内宮(ウチミヤ)」と名付ける。
外地と内宮の堀には、それぞれ東西南北、小さな橋がかけられた。
「すげえよ旅人たち! この大きな堀のおかげで、大雨が降っても畑が水浸しにならずに済むぞ!」
新しく狩人に加わったシジが、外地の堀を見て無邪気に笑う。
ーーこの時代の村民たちには、まだ「戦争」という概念がなかった。人間同士が殺し合い、奪い合うなど想像すらしていない。
皆、この2重の堀を、大雨の水はけや水路といった「水害から村を守るための仕組み」だと純粋に信じ込んで、汗を流していたのだ。
コウル自身も、最初から完璧な軍事要塞を想定して作ったわけではなかった。歴史の知識として「いずれ戦争が始まる」と知ってはいたものの、あくまでも主目的は雨の水はけ。
ただ、ほんのわずかな予備として…. 気休め程度に敵を防ぐ防壁としての構造を軽く持たせておいたに過ぎなかった。
誰もが、この平和が永遠に続くのだと信じていた。
それからの黄稲村の発展は目を見張るもので、人口も増加してゆく。
ーーある日の夕暮れ。それは突如として、しかし不気味なほど静かに始まった。
「……おい、コウル、水が止まってる」
畑の水路を見ていた村民が声をあげた。
夕闇が深まる中、タカが作った効率的な水路の上流が、音もなく堰き止められていた。
しかしそこにいたコウルは水路より堀の異変に目を留めた。
南外地の堀には音もなく投げ込まれた無数の丸太が、そこの水を埋め尽くしていた。
コウルは通常時に外地の堀を渡るため、小さな橋をかけていた
小さい橋をかけたのは大人数で渡れなくするためである。しかし普段、渡る分には問題ない。
ではなぜ堀が丸太で埋め尽くされているのか
それはこの堀を大人数で渡るため
ではなんのために大人数渡る必要があるのか
「ーーまさか」
コウルは、何者かがあらかじめ村を偵察し、堀の構造を完全に把握していたことを理解した。
本格的な襲撃への備えなどしていない、最低限の予備に過ぎなかった堀。
ーーそれが、本物の戦闘集団に
あっさりと破られたーー
「……しまった!!」
コウルが自らの見通しの甘さと最悪の事態を察知し、絶望に満ちた声をあげた瞬間。
南外地の外からとてつもない怒号が響き渡った。
闇の中から、毛皮を血で染めた数十人の男たちが、松明に火を灯しながら一斉に躍り出てくる。
「奪え! 抵抗する者は包囲して各個撃破しろ! 東西北の逃げ道には先回りをさせておけ!」
隊長らしき男の冷徹な号令が響く。
「みんな、内宮へ退け! 内宮を守れ!」 ゼクが声を張り上げ、村民たちを内側の区域へと誘導する。
しかし、略奪者の指揮官は、それすらも織り込み済みだった。
「逃げる敵はまだ殺すな。 逃げる敵の背中を追って、そのまま内宮に雪崩れ込め」
「な、なんで……なんで人が、人を襲ってくるんだ!?」
逃げ惑う外地の村民たちは、武器を向けられる意味が分からず、ただ恐怖にパニックを起こす。
そんな仲間たちをすぐ後ろから略奪者たちがぴったりと追尾する。
内宮の堀にかかる橋には丁度リョウがいた。
その橋を壊せば、略奪者たちの侵入を防げる。しかし外地の仲間たちが見殺しになる。
「どうすればいい….くそ! みんな逃げるしか」
その一瞬の躊躇を、敵は見逃さなかった。
「うわぁあああ!」
橋から、松明と鋭い石槍を持った男たちが、怒涛の勢いで内宮へと一気になだれ込んでくる。
コウルが軽く用意しただけの2重の堀も、
仲間を想うリョウたちの「優しさ」も、
それを逆手に取った敵の戦術の前に、完全に無力化されたのだ。
一瞬にして、黄稲村は炎に包まれ、阿鼻叫喚の地獄へと変貌した。
内宮の堀にかかる橋を死守しようとしたゼクの胸を、敵の槍が貫く。ゼクは血を吐きながら、そのまま動かなくなる。
子供たちを逃がそうとしたカヤ婆さんも、背後から無慈悲に突き刺され、崩れ落ちた。
「戦え! 武器を持って戦うんだ!」
フウゴが必死に声を張り上げた。
【第4話、いかがでしたでしょうか。文明は村を豊かにし、その豊かさが「獣」を呼び寄せた。今回はとにかくリアルに「容赦のない絶望」を描きました。
「外地」と「内宮」の境界線が、そのまま「見捨てるか、共倒れか」の残酷なデスゲームの境界線になってしまう演出は、書いていて自分でも鳥肌が立ちました。敵の指揮官、容赦なさすぎて本当にタチが悪いですね。次回もお楽しみに!】
コメント
3件

この物語は文字で表すのが難しそうですが、凄いですね。ぜひ漫画化して欲しい
うわっ…第4話、一気に空気が変わったね。タカたちの努力で村が豊かになっていく様子はすごく希望に溢れてたのに、二重の堀がまさか“防壁”として読める伏線だったとは…。コウルの“気休め”があっさり突破された瞬間、背筋が冷えたよ。リョウの優しさが逆に仇になる展開も胸が痛い。ゼクやカヤ婆さんの死も含めて、文明の脆さを思い知らされる回だった。続きが気になりすぎる…!🔥