テラーノベル
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奈美の自宅まで送り、豪が帰宅した時、時刻は午前一時を回っていた。
心地良い疲労感に包まれながら、ソファーへ身を投げる。
豪は、最後に立ち寄った公園で、奈美を愛撫した時の事を思い出していた。
だが、この日の夕方は、奈美とドライブに行く前、立川駅の改札内で元カノ、岡崎優子に遭遇している。
(あの女、まさか西国分寺の駅で、俺を待ち伏せしてたんじゃ……)
嫌な予感が、豪の胸中を去来していく。
それどころか、親友の谷岡純と飲んでいる時に、優子から連絡が来て以来、毎日のようにアプリ経由で、メッセージを受信していた。
(もういい加減、あの女に、奈美の存在を知らしめないとならない……)
豪が惚れて、愛おしくて触れたい女は、奈美だけなのだから。
奈美と丸一日以上過ごしたあの日以降、豪は残業が続き、帰宅が早くても二十二時という状態。
元カノの優子からは、今では一日十件ほどのメッセージが届き、正直気が狂いそうになる。
珍しく彼は二十一時くらいに帰宅すると、スーツのままスマホを取り出し、ソファーに腰掛ける。
メッセージを打ち込むのも面倒なので、アプリ経由で直接電話した。
「今平気か?」
『やっと連絡してきてくれたのね。ずっと待ってた。豪からの電話、すごく嬉しい』
「お前から好きな男ができたからって理由で俺を振ったくせに、今更大量のメッセージを送り付けて一体何なんだよ。要件だけ言う。お前に話がある。『山の日』に会って話がしたい」
『なら十時に立川駅の改札前で待ち合わせしましょ』
「わかった」
『あ、ちょっと待っ——』
元カノの優子は、何か言い掛けていたが、豪は構わず通話終了のアイコンをタップした。
スーツを脱ぎ、シャワーを浴びて軽く晩ご飯を食べた後、奈美にメッセージを打つ。
残業が続いている事や、他愛もない事を送ると、数分後に、彼女から返信が来た。
『豪さん、今日もお疲れ様でした。私も夏季休暇前で忙しくて毎日一時間残業してます。明日も身体に気をつけていきましょう。おやすみなさい』
奈美も仕事が忙しいようだ。
豪はメッセージアプリを閉じ、画像のお気に入りを開く。
ドライブデートの時、海岸で笑顔を彼に向けてる奈美の画像。
(早くアイツと完全に縁を切って、山の日以降の夏季休暇中は…………奈美と一緒に過ごしたい)
豪は、奈美の画像で癒された後、ベッドに潜り込んだ。
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