冥王が膝をつき、虚無の手の力が消え去ると、静寂がホールを包み込んだ。鋼谷と篠田は戦いの余韻を感じつつ、冥王の倒れた姿をじっと見守っていた。冥王会の幹部たちもその場に静まり返り、何も言わなかった。
だが、その静寂を破ったのは、冥王自身の声だった。
「ふん…そんな簡単に…死ぬわけねえだろ…」
冥王の体が震え、膝から立ち上がろうとした瞬間、空気が一変した。鋼谷と篠田は一歩後退し、冥王の変化に警戒を強める。冥王はその顔に血を滲ませ、にやりと笑いながら、再び自分の手を広げた。
「死なせるわけがない…俺は冥王だ。」冥王の言葉に、冷たい威圧感が漂った。
その言葉と共に、再び虚無の手が具現化し、今度は鋼谷と篠田に向かって伸びてきた。その力は前回とは比べ物にならないほど強力で、周囲の空間を完全に歪め始めていた。冥王は、自らが力を使い続けることで、再びその手の力を増幅させているようだった。
鋼谷は異常な力を感じ取り、行動に移す。篠田も同様に動き、冥王の異能を打破する方法を模索しながら、素早く動き回った。
「このままじゃまずい!」鋼谷は一瞬で冷静になり、篠田に声をかける。「お前、準備してくれ!」
篠田は頷き、周囲の物質を活用して冥王の力を削るための準備を始めた。鋼谷は冥王の虚無の手をかわしながら、彼に一気に近づこうとした。
だが、その瞬間、冥王はにやりと笑い、再び虚無の手を鋼谷に向かって放った。今度の一撃は速度も強さも段違いで、鋼谷が間一髪で避けることができても、篠田にまでその圧力が届いていた。
篠田は冷静に自身の力を使ってその圧力を受け止め、すぐに反撃の準備を整える。
「やっぱり…そんな簡単に終わらせるつもりはないか。」鋼谷は冥王の手をよけながら、冷静に言った。
冥王の表情が変わった。彼の目には明らかな怒りが宿り、次の瞬間、その怒りが爆発するかのように、彼は全力で異能を放った。
「お前ら…消えろ!」
虚無の手が今度は、鋼谷と篠田だけでなく、その周囲の全てを無に返すかのように広がり、鋼谷はその力に圧倒される。だが、彼はただ諦めるわけではなかった。
「俺は…絶対にお前を倒す!」
鋼谷はその言葉と共に全力で駆け出し、冥王の異能を振り払おうとした。そして、篠田もまた鋼谷に合わせて、冥王に一撃を加えるべく動き出した。
その時、冥王は一瞬の隙を見せた。彼の力が一瞬弱まったその隙を突いて、鋼谷は一気に冥王に接近し、篠田の援護を受けながら、冥王に致命的な一撃を加えた。
冥王は一瞬の驚きの表情を浮かべ、次の瞬間に激しく倒れ込んだ。虚無の手が消え去り、その場に静寂が戻った。
「これで…終わりだ。」鋼谷は冷徹に言い放ち、冥王の倒れた姿を見つめた。
だが、冥王は倒れながらも、どこか冷静さを保っていた。そして、彼は鋼谷の目を見据え、最後の言葉を発した。
「お前らに…まだ…分からんことがある…」
その言葉を聞いた鋼谷は、冥王が完全に死んでいないことを感じ取った。冥王の力は、まるで死んでもなお、存在し続けるような不気味なものだった。
鋼谷は深く息を吸い、冥王の最後の力を完全に断つために、一歩踏み込んだ。
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