テラーノベル
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「本当にさぁ、阿部ちゃんってなんで私と付き合ってくれたの?」
騒がしい楽屋の中。康二から送られてきた、満面の笑みを浮かべてメンバーと会話する阿部ちゃんの写真をうっとりと眺めながらそう問うと、彼本人に横からスマホの電源を落とされてしまった。
『せめてこっち見て質問してくれない?
第一、実写がこっちにいるのになんでそんなの見てるの?』
「あー、そんなのって言った。ほら見てよこのいい笑顔。もうキュンキュンしちゃう。このご尊顔をそんなの呼ばわりすることは、いくら本人でも許しません」
康二マジ天才、いい写真ありがとねー!と振り返って叫ぶと、康二からはいいってことよと言わんばかりのサムズアップが返ってくる。私もサムズアップを返して前に向き直ると、まだ阿部ちゃんは不服そうな顔をしていた。
『〇〇は写真の俺の方が好きなの?』
「え、いや、そんなことは言ってないじゃん……」
可愛く頬を膨らませているけれど目は本気そのもの。思わずたじろいで目を逸らしながら答えると、頬を両手で挟んで強制的に前を向かされた。
え、ちょ、ここ楽屋、と制止する間もなく唇が触れ合って、ふぇ……なんて情けない声が出てしまう。
『写真の俺は、こんなことしてくれないよ?』
「そ、そう、だね……」
『ね、本物の俺の方がいいでしょ』
「うん……」
ゆでダコみたいに真っ赤になって弱々しく頷く私を見て、阿部ちゃんはようやく満足そうに笑った。
『で、俺が何で〇〇と付き合ったか、だっけ?』
「あ……うん。
だってさ、私って阿部ちゃんの好みの女の子とは正反対じゃない?
どっちかというと男っぽくてガサツだし、服装も髪型も動きやすさ重視でワンピースやハーフアップなんてほぼありえないし、年下だし料理できないし……
まあツボ浅くてよく笑うし悪口は言ってないつもりだけどさ……」
『わー凄い。もしかして〇〇、俺が雑誌や番組のインタビューとかで発した女の子の好み、全部覚えてるの?』
「そりゃもう、推しの好みはリサーチ済みですよ」
『推しじゃなくて彼氏ね?そもそも〇〇だってアイドルじゃん笑』
「あ、あとそこも謎なの。私が分析した限りでは、阿部ちゃんって絶対公私混同はしないタイプって思ってたんだ。
それがなぜか、メンバーでファンでもある私と付き合ってる。なんか何から何まで意外なんだよね」
『ふふ、そんなに意外?』
「うん。どうしてこんな好みと真逆の私を好きになってくれたのかなって。ねえ何でなの!?」
詰め寄る勢いで身を乗り出す私を、近い近い笑、と押しとどめてから、阿部ちゃんは少し上を向いて考える仕草をした。
さてこの抽象的な質問に、SnowManの頭脳であり王道アイドルである阿部ちゃんはどんな答えを出すのやら、とワクワクしていると、しばらくして阿部ちゃんは苦笑いしながら肩をすくめた。
『んー、わっかんないなぁ笑』
「……え?阿部ちゃんにもわかんないことあるの?」
『そりゃあるよ。恋愛って、勉強のようにはいかないからね』
「ええ〜……」
何かロマンチックな答えでも返ってくるのではと期待していたけど、 どうやらそうではなかったみたいだ。まあ柄にもなくめんどくさい女みたいな質問した私が悪いのか……と納得しかけると、阿部ちゃんが続けた。
『……ただ、この子と一緒にいたい、って思ったんだ』
「え?」
『そりゃ男だし、理想のタイプとか、こういう風に恋を始めたいとか、そういう恋愛観はそれなりに持ってたつもりだったのに、〇〇と出会ってそれが全部ひっくり返っちゃった。理屈とか抜きで、気がついたら〇〇を好きになってた、そんな感じ』
「……あべ、ちゃん、」
頭のいい阿部ちゃんが言うにしては単純すぎるその言葉たちは、どんなロマンチックで難解なそれよりも私の胸にすっと入り込んできて、きゅんとしてしまう。
名前を呼んだっきり何も言えなくなっている私をしばらく眺めていた阿部ちゃんは──やがて、サッと目を逸らした。
『……その顔、狡い。かわいすぎ、』
「へ?」
『今日、帰ったら覚悟しといて』
「……んぇ!?」
何でこの流れでそうなるの!?どこでスイッチ入ったの!?一体私今どんな顔してんだ!?とショートしそうな頭でぐるぐる考えながら辺りを見回したら。
「……あ」
いつの間にか楽屋は静まり返っていて、メンバー全員の視線が私と阿部ちゃんに注がれていた。
……今の会話、全部聞かれてた感じ……?
ニヤニヤ笑う者、キャーとでも言いたげに口元に手を当ててふざける者、小さく微笑む者、呆れたように肩をすくめる者など多種多様な反応の中、やがてひーくんが代表して口を開いた。
『……阿部。
明日は振り入れなんだから、ほどほどにしておいてやれよ?』
「ひーくん……!?」
『あー、それは〇〇次第だけど、まあ善処するね?』
「阿部ちゃん……!?」
私のもはや悲鳴のような声とみんなの騒ぐ声で、元々騒がしかった楽屋は更に賑やかになったのだった。
ないとん
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1,652
22
#めめさく
水瀬菜音
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コメント
1件
うわあ、めっちゃかわいい話でしたね……! 私が一番きゅんとしたのは、阿部ちゃんが「わっかんないなぁ笑」って言ったあとに「一緒にいたいって思ったんだ」って真っ直ぐ言うとこ。推しの頭良すぎるところも好きだけど、理屈じゃないって言われたらもうノックアウトですよ……。 メンバーに全部聞かれてたオチも含めて、楽屋の温度が目に見えるみたいでした。続きすごく気になります💘