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🌇 シーン1:目覚めた都市
数日後、中央塔から伸びる碧素のラインが街全体へと拡張し、
小さな家屋、生活スペース、食堂、子ども用のフラクタル教室までが並ぶようになった。
「ふぅ……ついに、完成やなぁ」
ケンチクが塔の上階から街を見下ろしながら、ゴーグルを額にかけたままうなずく。
褐色の肌に陽を受けた短髪が風になびき、ツールベルトがじゃらりと音を立てる。
街の中心にそびえる《碧律の塔》。
その周囲を囲むように建てられた低層建築群は、青と白を基調としながらも、それぞれの住人の個性を反映している。
まるで“街そのものが住民の延長”のような、やさしい構造だった。
塔のそばには、子どもたちが笑いながら走っていた。
「すずか、住民数と安定指数は?」
「現在、登録碧族数は143名。生活区画の安定指数は97%。
都市としての稼働条件をすべて満たしました。
本日より、都市コード《碧律09》は“正式拠点”として登録されます」
「よう言うたなぁ……ワイらの街、やっと“生きとる”言えるな」
🏠 シーン2:街に宿る日常
ギョウが教室エリアで端末をいじりながら言った。
「住処も整って、碧族の親子が戻ってきてる。すでに生活が始まってるっぺ」
ゴウは広場の中心で子どもたちに持ち上げられていた。
「わっはっは!筋肉遊具になったっぺー!」
キョウは警戒モードを外し、塔の入り口で静かに見張っていた。
だがその目元は、どこか柔らかい。
「……問題なし。ここは、もう“帰れる場所”」
すずかAIが、塔の壁面スピーカーから静かに告げた。
「碧族が、初めて“心から帰れる”都市になりました」
📄 シーン3:新たな任地へ
その夜、塔の会議室にて。
ケンチクとアセイの前に、新たな任務通知がホログラムで表示されていた。
《任務通達:次任地・碧律10号区の都市設計を準備せよ》
《場所:旧ユーラシア南部戦災区域》
《条件:構造難度:S/暴走フラクタル残留あり/非公式難民区域含む》
アセイが眉をひそめる。
「難所だね。しかも“非公式難民”がいるってことは、政治的な火種も残ってる」
「……けどワイらは建てるしかない。街は、生きるための場所やからな」
ふたりの手が、同時に次の設計図に触れた。
そこにはまだ何も描かれていない――だが、確かにその“白紙”は、希望だった。
🌌 シーン4:出発の前夜
夜の塔の上、風が穏やかに吹いていた。
ケンチクが空を見上げ、ゴーグルを胸にかけた。
「アセイ。次の街も……ワイらで、ええもん作ろな」
「うん。街は建てるものじゃない。想いを“重ねる”ものだ。
俺たちが積んできたもの――それを、次の場所にも持っていこう」
塔のコアが小さく“鼓動”するように光った。
それは、今まで建てた都市すべての“記憶”と、“これから”が重なった証。
すずかAIの声が最後に響いた。
「設計士たちへ。
あなたがたが積み上げた構造は、碧族という名の命そのものです。
どうか、次の街にも“碧の律”を――」