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「怜……さん……」
艶を纏った涼しげな瞳を見上げながら、怜の頬に触れ続ける奏。
「奏? どうした?」
穏やかな声で問いかける怜に、躊躇うような表情を見せながら、奏は唇を微かに震わせる。
意を決するように、彼女は拙い様子で答えた。
「私……怜さんに…………触れ……られた……い…………です……」
奏の言葉に、怜は一瞬目を見張った。
彼の中では、彼女が嫌と答えると思っていたから。
異性に、自身の身体を触れられる事に強い抵抗があるのでは、と思っていたから。
初めて出会った時と比べると、少しは俺に心を開いてくれたのだろうか? と怜はぼんやり思う。
「…………怜さん、私の事……軽蔑してますか……? いや……してますよね、きっと」
「軽蔑? 何でだ?」
なぜ、と聞かれると、奏は戸惑ってしまう。
かつての恋人、中野から無理矢理純潔を奪われた過去があり、先ほどはセフレにならないか、とまで言われたのにも関わらず、つい数時間前、恋人同士となった人に、その日のうちに肌に触れられたいなんて言ったら、『この女、実は軽薄なのでは』と思われるのではないか、と奏は思ったのだ。
その胸の内を、恐る恐る伝えると、怜は奏の頭を撫でながら緩やかに笑った。
「好きな人に触れたい、触れられたいって思う事は自然な事じゃないのか? 俺は奏の事を軽蔑なんて一切してないし、寧ろ俺に触れられたいって思ってくれて、すげぇ嬉しいけどな」
優しい声音で答えてくれる怜に安堵しながら、ホッとため息をつく奏。
見上げると、怜が色香を孕ませた眼差しで奏を貫いている。
「奏。君の肌に……触れていいんだな?」
「……はい」
奏が返事をすると、怜は起き上がり、着ていたTシャツをぞんざいに脱ぎ放った。
身体全体に筋肉が付いた怜の肉体が、奏の目の前で露わになる。
腹筋は微かに割れ、怜が改めて『男』だと感じた奏は恥ずかしくなり、顔を逸らした。
ベッドから離れ、寝室のルームライトを若干暗くさせている怜の後ろ姿は、肩幅と背中が広く、腰回りが引き締まっている。
モデルかと思わせる逆三角形の体躯に、奏の心臓が大きく震えた。
***
ベッドに上がり、怜は奏に覆い被さりながら、彼女に『本当にいいんだな?』と意思確認すると、奏は息を呑みつつ、小さく頷いた。
怜の筋張った手が、彼女の着ている服に手が掛けられ、焦らすように脱がせていく。
一度大きく跳ね始めた奏の心臓は、バクバクと昂り続け、落ち着きそうもない。
キャミソールを脱がされブラも外され、怜の前には白磁の上半身が瞳に映し出された。
大きすぎず小さすぎない、形の綺麗な双丘と、その頂に佇む二つの小さな果実。
好きな男の人に、上半身だけとはいえ、裸体を晒している事に居た堪れなくなってきた奏は、怜に背を向けてしまう。
「奏。俺を見て。俺だけを……見てくれ」
色白の身体を仰向けにさせた怜は、瑞々しさを湛えた奏の乳房に息を呑みながら、繊細な宝飾品に触れるように、彼女をそっと抱きしめた。