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「っていうかさ、今から、どこに行こうとしてんの?」
「ん〜…………山の方って言えばいいかな」
「山の方でも、色々あるじゃん」
立川のホテルを十時に出発した二人は、拓人の愛車で長野方面に向かっていた。
平日の高速道路を、男の黒いセダンはスムーズに走行し、時々、サービスエリアやパーキングエリアに寄りながらドライブをしている。
「次はどこで過ごすか、まだ決めてないんだけどさ、その前に、立ち寄っておきたい所が三ヶ所ある。今、向かっているのは、そのうちのひとつ」
拓人がステアリングを握り、前方を見据えている。
「ふぅ〜ん…………」
「何だよ、そのつまんなそうな反応。まぁ…………夜は、あんたの事、たっぷり可愛がってやるから」
「なっ……何言ってんの!?」
優子は目尻を吊り上げると、拓人は笑いを堪えるように、クククッと零した。
十五時過ぎ、拓人が運転する車は、一般道から山道を走り、別荘地へ入っていく。
整備されているお洒落な雰囲気のエリアを通り過ぎ、さらに奥まった場所を走行していた。
車窓に映る景色は、緑豊かな高原から、徐々に鬱蒼(うっそう)とした森に変化していき、廃墟を思わせる山小屋風の建物の前で、男は車を止める。
(うわぁ……何か出そうな雰囲気じゃない……?)
優子の背筋がゾワゾワして、思わず瞳を泳がせてしまう。
「ちょっ…………今日はここで宿泊、なんて言わないよね?」
「ハッ…………そんなワケないだろ」
拓人が言い捨てながらシートベルトを外し、運転席のドアを開けて外に出る。
「あんたも、降りたら?」
「降りるけどさ……何か不気味じゃない?」
優子も助手席のドアを開けて外に降り立つと、薄暗い森の中にある建物を凝視していた。
「ついてこいよ」
「は? 本気で言ってんの?」
「ああ、マジで言ってる」
拓人は、木製の玄関ドアに手を掛けると、呆気なく開いた。
鍵を掛けないまま放置されていたと思われる建物に、彼は優子に構わず、さっさと中に入っていく。
「ちょっ…………まっ……待ってよ!」
彼女は、あまりにも不気味な雰囲気に両腕が泡立ち、小走りしながら男を追った。