金曜の夜、終電が迫る繁華街の片隅──。
「支店長!!!さぁもう一件行きましょうよ!!」
「あぁぁ?てめぇらで行って来いよ、俺はもう無理だ」
「またまたーー!ここから支店長の確変始まるんすよね!」
(※過去、五軒目からの怒涛の飲みっぷりで伝説残してる)
「なんの確変だよ……だいたいもう何件目だよ」
「まーだ、四軒目っす!!」
「お前ら、付き合いきれねぇよ……」
俺は反転して繁華街を後にする。
「してんちょーーー!!!」
――――
うるせぇ……
明日、休みだからってあいつら。
あぁ、まともに歩く事も出来ねぇ。
フラ…………ドンっ
――――
偕楽亭 善哉。
50歳、独身。
ホルデ農機株式会社勝平支店支店長。
部下からは、「ゼンヤさん」と呼ばれている。
肩からぶつかった先に自販機があった。
「とりあえ……ず、水だな」
ポケットの小銭を……
ピッ ガッシャン
グビグビグビグビ
ぶはぁぁー
細い路地へ誘導されるように歩く。
「あぁ、これ……確実に寿命縮めてんなぁ……」
特に問題、ねぇけど。
――――
フラフラしながら、帰り道を探す。
道端に、グロテスクな吐瀉物が広がっていた。
「お……先客、お疲れ様でした!」
フラフラ、フラフラっ…………
――――
しっかし、ここはどこなんだぁ?
前から歩いてくる家が無さそうなおっさんに聞こう。
「おとうさーん…………上野駅どこ?」
ホームレスらしきジジイは、
「……ああ、また一人……」
そうつぶやきながら、笑って通り過ぎた。
ちくしょ、答えろぉ
俺は力尽きて、その場にあるベンチに座る。
――――
気づけば、視界が滲んでいた。俺は、ベンチに沈んだ。
その瞬間だけ、どこか遠くで、何かが焼けるような匂いがした……
そんな気がした──。
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