その後、美月がシャワーを浴びようと準備していたらメールの着信音が鳴った。
メールは海斗からだった。
件名は、
【来週の『月遊び』について】
と書いてある。
気になった美月はすぐにメールを開いた。
【お疲れ様! 来週土曜の満月の夜にうちでスーパームーンパーティーをしないか? 亜矢子さん一家も呼んで。そうしたらう
ちのベランダで撮影出来るよね?】
そう書いてあった。
美月は思いがけない誘いに驚く。
実は美月も今度の満月は、シフトをしっかり休みにしていた。
だから晴れたら久しぶりに公園で撮影をしようと思っていた。
だからタイミング的にはばっちりな誘いだった。
そしてその誘いに抗えない自分がいる。
なぜなら、高級マンションのルーフバルコニーからの撮影出来るのだ。
周りに遮る建物がない場所からの撮影は、美月にとってかなり魅力的だ。
あの高層マンションからなら夜空が広く見渡せるだろう。
亜矢子達も一緒なら緊張しないで済むし、何よりも亜矢子と浩が喜びそうだ。
色々考えた挙句、美月はこう返信した。
「こんばんは。昨日はありがとうございました。満月のお誘いもありがとうございます。亜矢子達に聞いてみますね」
すると海斗から
「了解!」
と返事が来た。
美月は早速亜矢子にメールをした。
夜メールを送っても、亜矢子からの返事は早くても次の日の朝だ。
夜は息子の亮の世話や浩の食事の準備で主婦は大忙しだろう。
だから美月はメールを送った後、シャワーを浴びにバスルームへ向かった。
その時美月の電話が鳴る。
携帯を見ると亜矢子から電話が来ていた。
「美月、行く行く! 浩も行くって! 沢田さんに行くって返事しておいて!」
亜矢子は用件だけを言って慌ただしく電話を切った。
思わず美月は、
「なんなのよ」
と笑いながら呟く。
そしてすぐに海斗へメールを送った。
【亜矢子と浩さんが是非行きたいと言っていました。よろしくお願いします】
すると海斗からすぐに返事が来た。
【了解! 詳細はまたメールで知らせます】
美月はその返事を見てなんだかドキドキしていた。
一方、海斗は、美月からのメールを見てホッとした様子だった。
実は海斗は少し心配していのだ。離婚をしてまだ間もない美月に昨夜キスしてしまった事をだ。
先を急ぎ過ぎないように慎重にと心に決めていたはずなのに、昨日はつい我慢できなかった。
自分をどうしても抑える事が出来なかった。
その事で美月が逃げてしまうんじゃないかととても不安だった。
美月が海斗との付き合いに緊張しないでいられるにはどうしたらいいかを海斗は必死に考えていた。
そこで先ほどカーラジオを聞いた時にこのパーティーを思いついた。
亜矢子と一緒なら気兼ねなく来られるだろう。
海斗はそこまで美月の事を考えていた。
散らかった部屋を見渡して海斗はため息をついた後、
「掃除しないとな…」
そう呟いて笑った。
それからの一週間、二人は忙しい日々を送っていた。
海斗は曲作りとスタジオでの作業、そしてその合間には雑誌の取材、ラジオ出演、夏のロックフェスの打ち合わせやポスター撮
影など、様々な仕事に追われていた。
美月はというと、ミキ先生がいよいよ出版本の作品作りで忙しくなり、教室にはほとんど顔を出さなくなったので、スタッフ一同総出で教室を切り盛りしていた。
そして空いた時間は、自分の作品作りを始めようと考えていた。
それは、先日の横浜のイベントを見て海斗のプロとしての仕事ぶりに刺激を受けたからだ。
誇りを持って仕事に挑む海斗の真剣さを見習い、自分ももっと仕事に真剣に取り組もうと思っていた。
今までは惰性で働いていたような気がする。
しかし、銀行を退職してまでスタッフになった理由は、自分の腕を磨く為ではなかったのか?
美月は転職した当初の新鮮な気持ちを思い返していた。
幸い、教室がない隙間時間にスタッフはこの教室の工具や機械は自由に使って良い事になっている。
美月はこれから空き時間を利用して作品を作ろうと思っていた。
まず最初に作ろうと思っているのは、海斗へプレゼントする為のネックレスだ。
この日美月は、教室の隅にある彫金関連の本が並んだ本棚で、熱心に本を見ていた。
すると、久しぶりに教室に顔を出したミキ先生が美月の方へ近づいて来て言った。
「あら、何か新しい作品を作るの?」
「はい、友人にプレゼントするネックレスを。あ、バンドが趣味の人なので、そういうのって私作った事がなくて」
するとミキ先生が上の段の奥の方にある本を引っ張り出して言った。
「男性向きのハードなデザインはここに載っているわ。参考にしてみて」
「ありがとうございます」
「美月先生、いつも教室で教え方が丁寧だって評判いいわよ。これからも期待しているからよろしくね! 彼氏に素敵なのを作
ってあげて!」
ミキ先生は笑顔で言うと教室を出て行った。
(彼氏……)
美月は一瞬ドキッとした。
(いいえ彼氏じゃないわ! 勘違いしないで美月!)
美月は自分に言い聞かせる。
そしてミキ先生が渡してくれた彫金の本を慌ててペラペラとめくり始める。
美月はその本を借りて帰り、家でじっくりデザインを考えようと思った。
コメント
4件
も、も、も🤭💕海斗さんたら🤭💕美月チャンへの愛が溢れとるよぉ(*´艸`*)✨ みんなで🌕️スーパームーンパーティー🌕️✨海斗さん考えたね🤭👍👍👍 亜矢子チャンも浩さんも嬉しくて速攻返事しちゃうよね〜🤣👍
海斗さんの愛を感じる💖美月ちゃんの負担にならないよう、ペースを崩さないようにって。 ほんとは、大暴走しそうなんだろうけど懸命に抑えてる海斗さん🤭 美月ちゃんと出逢って月に興味を持って…スーパームーン🌕が応援してくれる(人*˘ᵕ˘*)*。+亜矢子ちゃん夫婦も…
そうか、美月ちゃんは自分の早合点にならないよう気持ちを持ってかれないようセーブ中か⁉️ でも海斗さんは美月ちゃんを大切に思って優しく無理なく好意を小出しにしてるよ〜🤭 スーパームーンパーティーもワクワク楽しみだし、美月ちゃんの作るブレスレットも海斗さんはきっと大喜びだよ🎶