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セミダブルベッドの上で、横になった二人。
不思議なもので、さっきまで眠かったのに、ベッドに入ると、睡魔が吹き飛んでしまう。
優子は、天井を見上げながら、口火を切るタイミングを伺っていた。
「…………なぁ。起きてる?」
「…………起きてるよ」
拓人が優子のいる方に寝返りを打つと、彼女も男に向き合った。
「俺ら、この一ヶ月近く、ずっと関東や関西の方に逃避行してたじゃん?」
「うん。大変だったけど、まぁ…………楽しかった……」
「いっその事……」
少しの沈黙の後、拓人が優子に穏やかな表情を向ける。
「…………沖縄に飛ぶか」
「はぁ!?」
男の唐突な提案に、優子は思わず素っ頓狂な声を上げると、拓人は、おかしかったのかクククッと笑いを堪えている。
「実はさっき、沖縄行きの飛行機のチケットを取ったんだ。明後日の正午発のチケットだけどな」
(この男のフットワークの軽さは、底知れない……)
優子が口をポカンと開けていると、男の指先が色白の頬に触れてきた。
「あんたと一緒なら…………どこに行っても……きっと楽しいに違いないって思うんだ」
「それに、私といたら、アンタがヤリたい時に、すぐにセックスできるもんね?」
「なぁ。俺さ、エロい事を抜きにして、かなり真面目に言ってるんだけど」
男が頬を膨らましながら不貞腐れている。
こんな拓人の表情を見るのは、ゴールデンウィークに立川で拾われて以来、初めての事だ。
男の表情に、少年っぽさを感じた彼女が、ふふふっと笑い零す。
「なに笑ってんだよ」
「ううん…………アンタも、子どもっぽい表情をするんだなぁ、って思っ──」
彼女が言い切る前に、細身の身体を拓人に引き寄せられ、胸の中に閉じ込められた。
優子を抱きしめる腕の力が、少しずつ強くなっていき、男に髪を掬い取られる。
「俺と一緒に…………行くだろ?」
拓人の鋭い眼差しに射抜かれ、彼女は、色香を湛えた瞳を見つめ返す事しかできない。
優子が黙ったまま逡巡した後、フッと唇を緩めた。