次の日、学校へ登校した凛は自分の席でメモ紙とにらめっこしていた。その時、肩をポンと叩かれた。凛はその方へ振り向く。するとそこにいたのは彩だった。
「おはよ凛」
「おはよ。どしたの?珍しく元気ないね」
彩の覇気のない声が聞こえる。
「うん。昨日聞いた話。なんか腑に落ちないんだよね…」
「はあ…」
「なんか突っかかってる事があって」
「…突っかかってる事?」
「うん。畑野さん、オリビアのことを“雪のように白い肌”って言ってたじゃん?」
「うん」
「それが気になったの。地肌、そんなに白いかなって。雪だよ?故人みたいになったら嫌じゃん」
「まあ確かに」
「っていうことは化粧ってことじゃん?」
「うんまあ」
「そこまで化粧する必要あるかなって」
「…」
「何か隠し事してたんじゃない?例えば“傷”とか」
「傷?」
「そう。過去の傷を見られたくなかったからとか」
「う~ん。まああり得るっちゃあり得る?」
「でしょ?」
「でもさ、一番気になるのはエドワードの自殺の件じゃない?」
「あっ。確かに」
今思い出したかのように彩はそう呟いた。
「オリビアが亡くなってから10年後。もう彼女の哀しみから解放されてもいいときだと思うけど」
「う~ん…」
「しかも近くにあった細々の紙。浴槽ということはきっと風呂場。ということは水で細々になったんじゃない?」
「あ!確かに。じゃあその紙を持って死んだ?」
「かも…」
「その紙って一体……」
そういった瞬間、チャイムが鳴った。彩は慌てた様子で自分の席へ戻った。
それから永遠と授業を受けた。
下校の時。二人はまた先程の話を始めた。
「紙ってなんだろ…」
「う~ん…わかんない。凛はなにか分かった?」
「ううん。分かんない。全然」
すると突然、凛の頭にとある言葉がよぎった。三文字。だがその言葉を言えばこれまでの考えが崩れる。一からと言っていいくらいに。
「どした?凛」
「う…ううん。なんでもない」
“不倫”という言葉。もしオリビアが不倫をしていたら。雪のように白く化粧をした理由、そしてエドワードの遺体近くにあった細々の紙。全てが繋がるような気がした。
「そう?」
「うん。あっ!私、塾あるから帰るね!」
凛はそう急ぎ足で自宅へ帰った。本当は塾なんてない。でもあの言葉が浮かんでから脳裏に張り付いて離れない。心の中にいるもう一人の自分が不倫だ!と煽っている。その考えを消そうとするが脳がそれを拒否している。凛はひたすらに走った。とにかく走った。自宅へ帰って安心したかった。今までの情報を整理したい。
力を込めて自宅のドアを開けた。その音に驚いたのだろうか母が心配そうな顔をして玄関まで来た。
「おかえり。凛」
「ただいま!」
凛は目の前にある階段を駆け上がり、自室へ入った。
「はあ…」一息ついた様子の凛はランドセルを下ろし、ソファの上に寝転がった。ふかふかのソファで寝転がっているとなんだか気持ちが穏やかになっていった。すると、そのまま睡魔に襲われ眠ってしまった。
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