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如月 未澄斗
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#刑事もの
鬼霧宗作
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第5話 雨
資料室。
時計は午後六時を回っていた。
坂田は満島凛一失踪事件の資料を読み返していた。
現場写真。
証言。
地図。
当時の事情聴取。
何度読み返しても、新しい発見はない。
「……何かあるはずなんだ。」
坂田は小さく呟く。
事件の真相ではない。
知りたいのは、人格が現れる条件。
優太が知らない記憶を持つ人格。
その人格を呼び出す方法。
資料をめくる手が止まった。
最後のページ。
事件当日の記録。
《天候:雨》
坂田は目を細めた。
「……雨?」
すぐに今回の事件資料を取り出す。
ページをめくる。
《天候:雨》
坂田は二つの資料を並べた。
「まさか……。」
藤堂が横から覗き込む。
「どうしました。」
「二つとも雨の日だ。」
「偶然じゃ。」
「偶然かもしれない。」
坂田は頷く。
「でも。」
「もし悪天候が人格を切り替える条件なら。」
二人は顔を見合わせた。
⸻
その日の夕方。
橋本優太の取り調べ。
坂田は資料を机へ置く。
「今日は事件について聞く。」
優太は静かに頷いた。
「はい。」
質問が続く。
返ってくる答えは同じだった。
「分かりません。」
「覚えていません。」
坂田は表情を変えない。
窓の外を見る。
黒い雲が空を覆っていた。
⸻
ポツッ。
窓ガラスを一粒の雨が叩く。
やがて。
ポツ……ポツ……。
雨音が部屋を包み始める。
坂田は優太を見る。
優太は俯いたまま動かない。
しかし。
肩が小刻みに震えていた。
「橋本?」
返事はない。
震えは大きくなる。
優太は突然、両手で頭を押さえた。
「うっ……。」
「橋本!」
「やめろ……!」
低い声だった。
今までとは別人のような。
「来るな……!」
次の瞬間。
机を蹴り飛ばした。
ガァン!!
金属音が取調室に響く。
藤堂が立ち上がる。
「押さえろ!」
優太は荒い息を繰り返していた。
目つきが変わっている。
坂田は確信した。
人格が入れ替わった。
⸻
坂田は一歩前へ出る。
「お前か。」
優太は何も答えない。
「聞いている!」
坂田は叫ぶ。
「君が!」
「この人格が!」
「女子中学生三人を殺したのか!!」
数秒。
沈黙。
優太の口元がわずかに動く。
「……。」
何かを言おうとした。
しかし。
突然、その体から力が抜けた。
ガタン、と椅子へ倒れ込む。
「橋本!」
坂田が肩を掴む。
ゆっくりと目が開く。
「……坂田さん?」
優しい声だった。
いつもの人格。
直後。
優太は白目をむき、そのまま意識を失った。
⸻
数分後。
医師が到着し、優太は担架で運ばれていく。
「過労でしょうか。」
医師が呟く。
坂田は答えない。
ただ取調室の窓を見つめていた。
雨は、まだ降り続いている。
⸻
廊下。
藤堂が小さく言う。
「坂田さん。」
「ああ。」
「今の……。」
「見たな。」
「完全に別人でした。」
坂田は静かに頷く。
「もう少しだった。」
「あの人格が話していれば。」
「真相が聞けたかもしれない。」
雨音だけが、警察署に響いていた。
あと一歩。
本当にあと一歩だった。
コメント
1件
うわっ第5話めっちゃ熱かった…!!😭💦 雨が人格交代の引き金って考察、鳥肌立ったよ〜。しかも最後、あと一歩で真相が聞けそうになったのに意識飛んじゃうとか…もどかしすぎる!!取調室の緊張感と「やめろ…!」の低い声の切り替わり、めっちゃゾクゾクしたし、次が気になりすぎて夜眠れないやつだよ…!!💥 坂田さんの執念と焦りも伝わってきて、めっちゃ推せる刑事さん…。続き待ってます📖🔥