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しばらくしてランチのお店に入り注文。
「で。望月さん。さっき食堂にいたくない理由、あった感じですよね?」
「え!?」
三輪ちゃんの鋭いストレートな指摘に、思わず飲んでいた水を吹き出しそうになる。
「な、なんで!?そんなことないよ?ホントに外の空気吸いたくて・・・」
必死に言い訳するも。
「どう考えてもいつもスマートで冷静な望月さんが、あの時動揺して普通じゃなかったですもん」
自分ではまったく気付いてなかった。
全然動揺してるつもりもなかったし、自然に出来てると思ってたのに。
三輪ちゃんには完全にバレてた。
「ところで望月さん、彼氏さんとは順調ですか?」
「あぁ・・そう、だね・・」
そして架空の彼氏のことをまた聞かれて、いつものように曖昧に返事をする。
「ってか、望月さん動揺した理由。もしかして早瀬さんですか・・・?」
「えっ!? なんで!?」
なんで、ここで樹の名前が三輪ちゃんの口から!?
え?私たちの関係バレてたってこと?
でも絶対バレるはずないのに。
「図星・・・みたいですね」
いきなり図星つかれて誤魔化す余裕もなくて素直に反応してしまった。
「早瀬さんと何かありました?大丈夫ですよ。誰にも言いませんから。気付いてるの私だけです」
三輪ちゃん頭良くて、こういうことそういえばすぐ勘付いちゃう子だった。
「言いたくなければいいですよ?私はとりあえず望月さんが悲しむ姿見たくないんで。早く元気になってくれたらそれでいいです」
どう反応していいかわからず黙っていたら、こうやって逆に気を遣ってくれる三輪ちゃんが優しすぎて心に染みる。
「三輪ちゃん・・・」
「はい?」
「今日さ、仕事終わってから話聞いてくれる・・・?」
今は三輪ちゃんに気持ち聞いてもらえるだけでも少し楽になれるかもしれない。
ここまで気付いてるならもう話した方がきっと楽だ。
「もちろん!じゃあ、今日早めに少し切り上げましょう!」
「うん。ありがとう」
「じっくり話聞くんで安心してください!美味しいモノ食べに行きましょう!」
「うん」
私はその元気な優しさに自然と笑顔で返事を返す。
ありがとう三輪ちゃん。
今はその元気が私を楽にしてくれそうだ。
「さっ!今日はじっくり言いたいこと言っちゃってください!溜め込んでること全部話してスッキリしちゃってください!」
今日は仕事を予定通り早々に切り上げて、三輪ちゃんとまた夜のご飯へ。
「もう思う存分話して、食べて飲んじゃいましょう!」
「ハハ。何それ(笑)」
テーブルにすでに料理とお酒が並んで、あとは話をするだけの準備万端な状況。
「あのさ~三輪ちゃん。ずっと付き合ってるって言ってた彼氏のことなんだけど・・。実はそれもうずっと前に別れててさ」
まずはそこから説明した方がいいよね。
「やっぱりそうだったんですね~」
「えっ?わかってたの!?」
「なんとなく。望月さんあんまり彼氏さんの話自分からされないんで、必要以上に聞かなかったってのもありますけど。なんとなく言い出しにくいというか、そういうことにしてるのかな~って」
「三輪ちゃん、気付いてたんだ・・・」
「そうでもしておかないと、望月さんひたすらお誘いの声かかってましたもんね。 なんとなくそういうの避けたかったのかな~と」
さすが三輪ちゃん。
何も言わなくてもちゃんと気付いてくれて察してくれてたんだな。
仕事もこういう気遣いもホントよく出来るいい子。
「よくおわかりで。 なんかそういうのが面倒でさ。しばらく自分も仕事に集中したかったし、恋愛する気もなかったからさ。正直そういうことにしておいて、助かったこと随分あったし。ごめんね、三輪ちゃんにもちゃんと言わなくて」
「いえいえ。私も望月さんが仕事出来やすい環境で取り組んで頂きたかったので。私は望月さんのお仕事のサポート出来るなら全然」
「ありがとう、三輪ちゃん」
「でも、早瀬さんとは何かあったんですよね?」
「えっ!? それがなんでわかるのかが不思議。食堂の時、自分では動揺してたつもりもなかったからビックリしたし。なんで、早瀬くんのことだってわかったの・・?」
樹のことまで勘付くとか三輪ちゃんすごすぎなんですけど・・・。
「実は午前中、望月さん席外してる時、早瀬さんがうちの部署訪ねて来て」
「えっ?そうなの?」
「はい」
樹、いつの間に・・・。
よかった、いない時で。
そっか、向こうが訪ねて来る心配残ってたの忘れてた。
「その時、私がたまたま対応したんですけど。望月さん訪ねて来た時、実は早瀬さんすごく焦ってて」
「えっ・・?」
「仕事のことで急用なのかな~って最初は思ってたんですけど。でも話してて、その焦り方がどうやらそうじゃないな~って」
「早瀬くん・・何だったの?」
「望月さんに今すぐ会いたいって感じでしたよ。望月さんいないのすごく不安そうで焦ってました。それだけじゃなく今日おかしい様子なかったかとか、望月さん心配するようなこと聞かれて」
樹・・・そんなこと三輪ちゃんに聞いてたんだ。
「そんなのただのプロジェクト仲間なのに、わざわざ普通聞かないじゃないですかー」
確かにそれ普通だったら聞いてたらおかしいよね・・・。
「あ~・・それ昨日帰る前に高杉くんにプロジェクトの資料預けていったから、それ見ての急用だったんじゃないかな・・?」
と、三輪ちゃんになかなか無理やりのこじつけで言い訳する。
「まぁたまたま私が顔見知りでそこにいたから、そこまで聞いたのかもですけど。でも私じゃない人だったら普通変に思いますよ?」
確かに・・・。
三輪ちゃんとは顔見知りだから、そこまで聞いたような気もするけどな。
「あれは仕事で急用って感じの雰囲気じゃなかったです。まぁ早瀬さん全然そんなことも考えられないほど、それだけ余裕なかったってことなんでしょうけどねー」
三輪ちゃんのその言葉が嬉しいような切ないような。
「望月さんと同じように早瀬さん完璧なイメージあったんで、なんか意外でした。望月さんのことになると、自分で気付かなくなるほど、こんなに必死で余裕なくなっちゃうんだなって」
うん。
私も三輪ちゃんの言葉聞いて驚いた。
社内での私との関係も余裕で仕事にも影響がないって、樹が自分で言ってたし。
そんな身近な三輪ちゃんにバレちゃうほどって・・・なんか意外。
「それで食堂でのあの望月さんの慌てっぷり。昨日の帰りも早瀬さん一緒に見かけた時、望月さんの様子おかしいなぁって、その時なんとなくわかりました」
やっぱりあの時、三輪ちゃん気付いてたか・・・。
「早瀬さんも望月さんも、完璧な二人がお互いのことで同じように動揺して・・・。なんか二人似てますよね」
「いや、それは・・・」
ホント私も全然自分で気付かなかった。
そんなに慌ててたなんて。
「やっぱりお似合いです」
「三輪ちゃん・・・」
その言葉やっぱり今は切ないな・・・。
「実は前食堂で早瀬さんたちと隣になった時あったじゃないですかー」
「この前たまたま一緒なったね」
「あの時から私密かにそうじゃないかな~って思ってました」
「えっ!?あの時も!?」
えっ、ちょっと待って。
あの時どんなだったっけ!?
「普通の人だと多分気付かないと思います。でも私そういうの案外気付いちゃう人なんです」
いや、そんな爽やかにニッコリ笑って言われても・・・。
やっぱり三輪ちゃん侮れん。