夜の校舎は、昼間の喧騒を忘れたように静まり返っていた。窓の外には街灯の光が滲み、机の上に薄い影を落としている。
「……また、距離を置いた」
自分でも、どうしてなのか分からない。
ほんの少し、心を開けそうになっただけなのに――その瞬間、体が拒絶するように離れてしまう。
「怖い」というより、「信じられない」。
優しい言葉をかけられても、それがいつ裏切りに変わるのかと思ってしまう。
誰かと笑い合いたい。
それなのに、誰かと笑っている自分が嘘くさく感じてしまう。
そんな自分に、また嫌気がさす。
「必要とされたことなんて、一度もない」
小さく呟いた声は、空気に溶けて消えた。
思い返しても、誰かが本気で自分を求めてくれた記憶がない。
助けを求めたことも、きっとなかった。
どうせ迷惑をかけるだけだと思っていたから。
でも、本当は――ただ誰かに、「いていい」と言ってほしかった。
役に立つとか、強いとか、そんな理由じゃなくて。
存在そのものを、肯定してほしかった。
机の上のノートに、震える文字で書きつける。
「誰かと、ちゃんと繋がりたい」
その文字を見て、少しだけ息を吸い込む。
まだ誰にも届かない声。
それでも、確かにここにある。
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