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29話 何もしない依頼
静かな野原
風だけが
草をゆらす
ふっくらは
指定された石の上に座る
丸い体
短い脚
手は膝の上で
ゆるく重なっている
表情は
やる気があるのか
ないのか
わからない
少し離れた場所で
琶が立つ
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼は
動かず
影だけが
ゆっくり伸びる
ふっくらの任務は
「待機」
それだけ
ふっくらは
何度も周りを見る
何も来ない
何も起きない
時間が過ぎる
鳥の声も
ほとんど聞こえない
ふっくらは
石の上で姿勢を変える
腹が
少し沈む
また正面を見る
琶は
動かない
まったく動かない
風に鱗が
かすかに揺れるだけ
さらに時間が過ぎる
ふっくらは
うとうとしはじめる
頭が
前に倒れそうになって
戻る
「……これで
いいのかな」
ふっくらが
声を小さくもらす
琶は
ゆっくりうなずいた
その一度の動きだけが
今日いちばんの変化
やがて
太陽が少し傾く
ふっくらの足元に
小さな袋が置かれている
気づいたときには
もう
誰もいない
袋の中には
報酬が入っていた
量は
そこそこ
ふっくらは
袋を抱えて
琶を見る
琶はただ
首をわずかに傾ける
依頼は
完了した
何もしていないのに
それで
本当に
完了らしい
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