テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
御子柴聖 十七歳
あたし達の現れたのは、同じような顔立ちをした双子の姉弟の二人だった。
赤のインナーカラーにサラサラの黒い髪は、色白い肌を強調させ、中に施された赤色のインナーカラー、長い睫毛の間から見える苺のように赤い瞳を宿した少年と、顔が瓜二つの黒髪ロングの少女が部屋に入って来る。
うわぁー、二人共、可愛い顔してる。
あ、男の子に可愛いって失礼だよね。
「あー、任務明けで寝みぃ」
少年は欠伸をしながら、通された部屋の中を見渡す。
その様子を見ていた少女は、少年の背中を軽く叩きながら声をかける。
「美月、しっかりしてよね。理事長達が居るのに…」
「二人共、お疲れさん。野々山、制服姿だが、任務帰りか?」
智也さんはそう言って、二人に話し掛けた。
「あー理事長、お疲れ様でーす。ふわぁぁ、そうなんですよー。夜通し警備させられて、眠たくて仕方ありませんよ」
美月と呼ばれた男の子は、欠伸をしながら智也さんに挨拶している中、ふと、少女と目が合う。
見定められているような…、何か疑っているような視線だ。
「理事長。もしかして、その子ですか?」
「そうそう。紹介しとくな、この子が鬼頭聖だ。」
「ど、どうも…。」
智也さんに紹介され、あたしは女の子に軽く頭を下げた。
「三年の野々山日雛です。んで、こっちが野々山美月。うち等、双子なの」
「どーも、美月でーす」
野々山雛さんに紹介された美月さんは、気軽な挨拶をする。
「通りで!!お顔が似てますもんね」
ガチャッ。
再び扉が開いた。
「ちーす」
ダルそうに入って来たのは男の人だった。
黒髪の金メッシュで黒と黄色のオッドアイ、奇麗な顔立ちの男の子の後ろから、黒髪パッツンパーマの黄色の瞳の女の子が現れた。
妖艶な雰囲気を漂わせ、髪を手で靡かせながらの野々山雛さんに声をかける。
「あれ、任務終わったんだ?雛」
「玉ちゃん」
どうやら野々山雛さんの知り合いのようで、学院の三年生なのかもしれない。
あたしの事は目にも止まらないらしく、二人は女子らしい話で盛り上がっている。
「ほらお前等、鬼頭に自己紹介しとけよ。」
後ろから佐和先生とジュリエッタ先生が現れ、佐和先生が少し前に現れた男女二人組に声をかけた。
「あ!この子が?初めてまして、三年の玉村玉村でーす。玉ちゃんって呼んでね。で、隣にいるのが犬山」
「犬ちゃんって呼んでねー、同じく三年だ」
「鬼頭聖です。」
「さ、メンバーも揃った事だし始めるぞ。」
智也さんの声と共に、それぞれが席に座った。
壱級のメンバーが揃った事を確認してからか、店員さん達が次々と中華料理を運んでくる。
食欲を誘う香ばしく焼かれた餃子、エビチリ、唐揚げ、チャーハン、酢豚に麻婆豆腐、どれも美味しそう。
「では壱級集会を始める。学生達は食事をしながら聞いてくれ。佐和、情報の報告を頼む」
「はい理事長。先日ジュリエッタと共に北海道に任務行って来ました。眠っている雪女の封印が解かれ神主と巫女が惨殺されました。そこで、現場にコレが落ちていました。ジュリエッタ出してくれ」
佐和先生がジュリエッタ先生に合図しをする。
「この液体が入ったビンが落ちてました」
紫色の液体が入ったビンを取り出した。
「「「「!?」」」」
あたし達は驚いた、だってあの液体は…。
「八岐大蛇の血…。」
あたしは思わず声に出してしまった。
まさか、こんな所で八岐大蛇の血を再び見るとは思わなかったからだ。
だが、あたしの発言は周囲からしてみれば、大した問題じゃなそう。
これ以上は余計な事を言わないように、唐揚げを一口齧る。
「鬼頭達の初任務でも、同様に沼御前が飲んだ物と同じ物が落ちていた。憶測ですが…、八岐大蛇は自分の血を妖怪に与え、力を増幅させている可能性が高い。あの神社の周りにいる妖怪達は四級の雑魚ばかりだった筈だ」
佐和先生の話している途中に、ジュリエッタ先生も口を開いた。
「惨殺された死体の周りにコレと同じ、中身の入っていない瓶が何本も落ちていました。進ちゃんの推理は正しいと思います」
「野々山達の方はどうだった?」
智也さんは双子達を見ると、視線を向けられた雛先輩が答える。
「各地に眠っている妖怪達が封印されている祠を二手に分かれて調査しましたが、佐和先生の持っている物と同じ物が落ちてました。」
「あー、それならよ。雛と同じく俺等の所にもあったぜ」
雛先輩の報告を聞いていた犬山先輩も、佐和先生が出した瓶をテーブルの上に置く。
色んな場所で八岐大蛇の血が見つかってるなんて…。
八岐大蛇は仲間を増やそうと動いてる可能性が高い。
「封印は解かれ、陰陽師達の惨殺死体。陰陽師の数を減らされている可能性がありますね。」
「じゃあ、意図的にやってるって事かよ!」
総司さんの言葉を聞いた隼人は、力強くテーブルを叩く。
「八岐大蛇の封印が解かれ、いよいよ本格的に百鬼夜行のメンバーを集めに掛かっている。それを止めなければ、早い話、東京が乗っ取られるぞ」
「次に封印を解かれそうな所を張るしかありませんね。理事長の予想は何処ですか?」
蓮が智也さんに尋ねた。
蓮の言う通り、百鬼夜行の復活を止めるには八岐大蛇達よりも先回りし、封印を解かれないようにする事。
こっちから動いた方が、行方知らずの八岐大蛇の居場所を掴む事が出来るかもしれない。
「鴉天狗の眠る和歌山県の御坊市とぬらりひょんの寝る岡山県へ二手に分かれて任務をして貰う事にした。これは陰陽協会からの依頼でもある」
「陰陽協会の…、とうとう上が動き出したと言う事ですね。鴉天狗とぬらりひょんの居場所は、陰陽協会の委員から聞いたのですか?」
「丁度、壱級の集まりもあったし、お前達に情報を共有するには良いタイミングだった。親玉の八岐大蛇の居場所を掴めるかもしれないとの事だ。三年生には悪いが、また任務に出てもらう」
総司さんと智也さんの会話を聞いていた美月さんは、げんなりしながら呟く。
「マジ?今、帰ってきたばっかなのに?」
「仕方ないでしょ、美月。事態が事態だし、壱級になってから休みないでしょ?理事長、美月の事は気にしなくて良いです。話を続けてください」
「おい、弟の気持ちも優先してよ」
野々山雛さんは美月さんの言葉を無視して、智也さんに言葉は向けているのに、視線は何故か蓮に向けられている。
視線を向けられている事に気が付いた蓮は、野々山雛さんに視線をあえて無視してる感じだった。
「今回の任務のメンバーを言うぞ。まず和歌山には野々山双子に鬼頭、田中と早乙女。そして、岡山に佐和にジュリエッタ、犬山と玉村、楓に行って貰う。今回は結界師も連れて行く。本城は東京でいつでも医療班を出動出来る様に手配をしといてくれ」
「了解しました、いつでも出動出来るように待機してますね」
智也さんの言葉に総司さんは頷いた。
あたしは野々山双子達と行くのか…、蓮達もいるから良かった。
「出発は一日後だ、急で悪いが出来るだけ急いでほしい。悪いな、皆んな」
「理事長の所為じゃ有りません。それじゃ、俺達は準備に行きます。すみませんが、お先に失礼します」
「お先です、理事長。貴方達は、食事を楽しんでから帰りなさいね」
そう言って、佐和先生達は先に部屋を出て行った。
「今回、一緒に任務に行く事になったけど。聖って呼んで良いかな?」
不意に野々山雛さんに話し掛けられ、驚いてしまう。
まさか、向こうから声を掛けられるとは思ってもみなかったから。
今まで、あたしと歳が近い女の子と話した事がない、あるのは大人の女性か男性だけ。
御子柴家の使用人や、本城家の人達のみ。
「あ、はい!宜しくお願いします。雛さんと呼んだら良いですか」
「別に雛で良いわよ、一つしか歳は変わらないんだから」
「さんじゃなく、先輩と呼ばせていただきます」
「いーなー!俺もそっちが良かったぜ。」
あたしと雛先輩の会話を聞いていた犬山先輩は、ぷぅっと頬っぺたを膨らませていた。
「仕方ないでしょ!理事長の指示なんだから。気にしないでね?聖ちゃん」
「い、いえ、大丈夫ですよ。気にしないで下さい」
「ふふ、ありがとう。貴方、本当に可愛いわね、噂通り」
「え、噂?」
玉村先輩は意味深は笑みを浮かべながら、あたしの質問には答えようとしない。
ただ、あたしに視線を向けられ、見定められているような気分になる。
それは犬山先輩もそう、物珍しいものを見てる感じ。
なんかこの視線、御子柴家に居た時にも散々向けられてきたものと同じだ。
二人はあたしの事を歓迎してるのではなく、もっと違う感情が混ぜられている。
その違う感がなんなのか分からないけど、歓迎はなさそう。
「今回の任務は早乙女と一緒か。まぁ、宜しくな」
美月先輩が隼人に話し掛け、隼人は美月先輩に向かって軽く頭を下げながら、言葉を吐く。
「ウッス、今回は宜しくお願いします」
「おう、聖も宜しく頼むな」
「はい、お願いします」
美月先輩ってフランクで良い人だな、あたしもつられてしまいそうになる。
隼人も敬語使ってるし、美月先輩の事を尊敬しているのかな?
それぞれが食事と会話を楽しんでいると、集会のお開きの時間になり、智也さんは腰を上げた。
「それじゃあ今日は解散する。お疲れさん。明日に備えてくれ」
あたし達は智也さんの言葉を聞いてから、各々部屋を出た。
陰陽師達の惨殺…、八岐大蛇の力はそれ程までに強いって事か…。
陰陽師は昔程、人数が多くないらしく減らすなら今が丁度いいタイミングだと思ったのだろう。
「姉ちゃん」
ふいに楓に引き止められ、振り返ると楓は神妙な面持ちで立っていた。
「楓。どうしたの?」
「今回、俺は姉ちゃんとペアにならなかったけど、無理だけはしないでくれ、マジで」
八岐大蛇の話を聞いて、楓はあたしの事を凄く心配しているのが分かる。
今回の任務で危ないのはあたしだけじゃない、楓自身だって危ない目に遭う可能性だってあるのに。
それなのに自分の身の心配よりも、あたしの身の心配をしてくれている。
「早乙女、マジで姉ちゃんの事頼む。俺が側に居れない分、姉ちゃんの事を守ってほしい」
真剣な視線は隼人にも向けられた、隼人もいつもみたいに喧嘩腰の話し方ではなく、優しい話し方をする。
「あぁ、分かってる。ちゃんと守るからお前も無理すんなよ、楓。危険なのはお前も同じだからな。楓、お前が怪我したら聖が悲しむ事を忘れるな」
隼人はそう言って楓の頭を撫でた。
まさか楓が、隼人に頼み事するなんて思ってもみなかった。
「僕もいますから。少しは安心して下さい」
蓮も楓の肩を優しく触れ、楓を少しでも安心させようと、あたしも楓の手を優しく握る。
***
御子柴聖達の光景を、野々山双子が見ていた。
「雛」
「何、美月」
「お前、気付いてるだろ?」
「何を」
「あの男の事」
野々山雛の視線の先には本城蓮がいた、その視線は熱が籠っており、誰が見ても恋心が宿っている事が分かる。
「雛、何も言わずに帰っていいのか?ずっと会いたがってたじゃん。やっと会えたのに」
「いいのよ、美月。あの人が私の事を無視したのには理由があるのよ。この場で言えない理由がね」
「けどさ、弟としては姉の幸せを願ってるものだよ?」
「いつから、シスコンになったのよ美月」
そう言って、野々山雛は本城蓮を背に向け歩き出した。
「ちゃんと話せる日は来るよ」
野々山双子が、そんな会話をしているのをあたしは気付いて居なかった。
***
同時刻 京都 本城家
本城克也 四十八歳
コンコンッ
俺はアサミ様(聖様の母上)がいる部屋を訪れ、アサミ様の返答を静かに待つ。
襖を軽く言叩いてから数秒後、不愛想な声が聞こえてきた。
「誰」
「克也です、部屋に入っても宜しいですか?アサミ様」
「克也?」
部屋を訪ねて来たのが俺と分かり、アサミ様が安心したのか襖を開けてくれる。
長い前髪から見える顔立ちは、痩せ細っていても綺麗だと思う程、病弱な姿でも綺麗であった。
「何、何の用」
「お食事を持って来ました。食事を召し上がってないと聞きまして、おかゆは如何ですか?少しでも、お腹に入れられた方がいいかと」
「ありがとう、机に置いていてちょうだい。後で、頂くから」
「分かりました、失礼しまうす」
アサミ様に許可を貰ってから部屋に入り、使用人に作らせた卵粥を机の上に置く。
俺はずっと、アサミ様に聞きたかった事を聞いてみる事にした。
機嫌が悪くなるこ事を覚悟しながら。
「どうして聖様にお会いにならないのですか。」
俺がそう言うと彼女の動きが止まり、持って来た料理を持ち上げて叩き落とした。
ガシャーン!!
食器の破片が頬を掠り、アサミ様の表情が怒りに満ちていく。
「あの子は呪われた子よ!!?あんな…あんな子に会いたいなんて思わないわ!なんて事を言い出すのよ!?冗談じゃないわ、誰があんな恐ろしい子供に会いたいものですか!」
「アサミ様、あの子は恐ろしい子供なんかじゃありませんよ。御子柴家の特殊な環境が、聖様の自由を奪ったのですよ。それは、一番近くで見ていたアサミ様が御存じでしょう?」
「ははは…、だから何なのよ。あのまま、八岐大蛇に喰われて死んでしまえば良かったのよ」
「アサミ様!なんて事を言うのですか!!!」
本城家の当主として、御子柴家の奥方に大声をあげる事は許されない。
だが、俺は聖様の成長を十年近く側で見てきて、父性が湧かない訳がないのだ。
可愛がってきた聖様に、酷い事を言うアサミ様が許せなかった。
「何よ、私は旦那も楓も、あのガキの所為で失ったのよ!?あの子を産んでから、不幸な事ばかり起きているじゃない。八岐大蛇の封印が解かれたのも、御子柴家の人間が殺されたのも、全部全部あの子の所為」
「何故、そこまで聖様の事を毛嫌いするのですか」
「あの子は、あの人の……わりなのよ」
「!?」
俺はアサミ様の言葉に驚いた。
「そんな…、まさか…、嘘ですよね?そんな事があり得るのですか?」
もし、アサミ様の言ったこ事が事実なら、とんでもない事になってくるぞ。
俺の表情を見たアサミ様は、小馬鹿にするような笑い方をしながら口を開く。
「調べたら分かるわよ。調べてご覧なさいな。私は御子柴家の人間にとって、産むだけの女なのよ…。今日はもう出て行って、話したくないわ」
そう言って、アサミ様は俺を追い出してから、乱暴に襖を閉める。
「まさか聖様が?早く事実を確認しないとっ!!!」
俺は廊下を走り急いである場所に向かった。
#異世界ファンタジー