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りりしゅな
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その日は突然の雨だった。
山中「うわ、最悪」
昇降口で立ち尽くす山中。
吉田「傘忘れたの?」
振り返ると吉田がいた。
山中「はい」
吉田「お前、よく忘れるな」
山中「仕方ないじゃないですか」
吉田「仕方なくない」
少しの沈黙。
吉田「……入るか?」
山中「え?」
吉田「傘」
山中「いいんですか」
吉田「風邪ひかれても困る」
山中「じゃあ…お願いします」
並んで歩く帰り道。
雨音が静かに響く。
距離が近い。
近すぎる。
山中「先生」
吉田「ん?」
山中「先生って、本当に鈍いですよね」
吉田「またそれか」
山中「だって本当だし」
吉田「だから何にだよ」
山中は少しだけ立ち止まった。
山中「…..好きとか」
吉田の足が止まる。
吉田「……誰の話だ」
山中「さあ」
吉田「山中」
山中「はい?」
吉田「それ、お前の話か?」
逃げられない。
逃げたくない。
山中「……だったらどうします?」
吉田「……」
山中「困るでしょ」
吉田「……言ってみろ」
静かな声。
山中「…..先生です」
雨音だけが残る。
吉田「本気か?」
山中「本気じゃなかったら言わないです」
吉田「……」
山中「好きです」
声が震えていた。
山中「ずっと、好きでした」
山中「…出来たらその、返事待ってます」
吉田「…」
それから数日。
距離ができた。
補習はなくなり、会話も減った。
山中(終わったな)
そう思いながらも、諦めきれない自分がいた。
吉田「山中、放課後残れ」
久しぶりに呼ばれた教室。
山中「…..はい」
吉田「この前の話だが」
山中「…..はい」
吉田「すぐに答えを出せなかった」
山中「ですよね」
吉田「教師としては、簡単じゃない」
山中「……わかってます」
沈黙。
吉田「でも」
山中は顔を上げる。
吉田「考えた」
山中「…..」
吉田「お前のことばかり考えてた」
心臓が止まりそうになる。
吉田「気づいたら」
一歩近づく。
吉田「他の生徒とは違うって、はっきりわかった」
山中「それって…」
吉田「たぶん俺は鈍い」
少し笑う。
吉田「でもな」
山中「はい」
吉田「お前に言われて、やっとわかったよ」
まっすぐな目。
吉田「俺も、お前が好きだ」