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鬼舞辻無惨 「…御前,名はなんと言う?」


少女 「…(首振り」


鬼舞辻無惨 「…!(名すらないと言うのか…?…遁でもない親だったのだな…。)」


少女 「……?(じっと見つめる」


鬼舞辻無惨 「では,今日から御前の名は,『幸(さち)』とする。…文句は或るまいな?」


少女 「…!!(頷」


鬼舞辻無惨 「では,幸。今日から御前の住処は私の城だ。此処では遠慮などせず,気楽に過ごしていゝ。御前の居住区は,猗窩座の隣でいゝな?」


幸 「(頷」


猗窩座 「…御前が,幸だな?今日から宜しくな。」


幸 「(頷」


ガサガサガサガサ…

猗窩座 「…??」


ドサッ…

猗窩座 「…此れを俺に??(簪…か?何故俺に…?御礼のつもりなのか…?)」


幸 「(頷」


猗窩座 「…有難うな。大事に取っておく。」




鳴女 「…幸さん?御飯をお食べに成られていゝのですよ?」


幸 「………」


ドサッ…バクバク…

鳴女 「幸さん…。(可哀想に…きっと元の住処で…床で食す様,命じられていたのね…。だからこんな,獣みたいな食べ方で…。)」



鬼舞辻無惨 「…鳴女。幸の様子はどうだ?」


鳴女 「はい…幸さんの様子ですが…先程の御飯の際,中々御食べに成られないので,御食べになる様申したら,床に全てを置き,御食べに成られていました…。きっと,元の住処での,生活がまだ抜けてないのかと…」



鬼舞辻無惨 「…そうか。有難うな。」

(明日,産屋敷の所へ連れて行くか…物を申さないのも気になるからな…。)




産屋敷耀哉 「うーん…これは多分『ストレス』による物だろうねぇ…。暫くすれば自然と声を出せるようになる筈だよ。念の為薬を出しておくね。」


鬼舞辻無惨 「…嗚呼,有難うな…」


産屋敷耀哉 「それにしても,無惨。君が人助けをするだなんてねぇ…?本当はこの子誘拐してきたんじゃないのかい?」


鬼舞辻無惨 「…私がその様な下衆な真似をするとでも思って或るのか…?」


産屋敷耀哉 「ははっ。冗談だよ。取り敢えず,薬は出しておくよ。後で鴉に届けさせておくよ。」


鬼舞辻無惨 「…嗚呼,頼む…では,更々帰るとしよう。…幸。御礼を言うのだ。」


幸 「(お辞儀」



産屋敷耀哉 (それにしてもー…声を失った少女…か,夙く癒るといゝね…。私の方でも,癒す方法を調べておくとしようかな……)



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