東京都 多摩川
2人の若い男女のカップルが多摩川の沿岸を歩いていた。時間は夜中の11時。2人とも酷く飲酒をしたのか酷く酔っている。
「知ってっかぁ〜?多摩川には、川の魔物が出るって噂があんだぜぇ〜?」
彼氏の方が、酔っ払い彼女に向けてそのようなことを口にする。
「もぉ〜何言ってんのよ〜。けいちゃん〜。魔物なんているわけないじゃん〜」
「でも、もし魔物が出たらぁ〜私のこと守ってくれるんでしょ〜?」
彼氏は彼女に向かって肩を組み自信満々げな表情で言う。
「あたりめーじゃん。どんな怪物が来ても俺が全部殴り殺しにしてやんよ〜!」
「あはは!けいちゃん最強〜!」
そんな、2人の背後になにかが迫って来ていた。街灯がチカチカと点滅しその”何か”は2人に少しずつ近ずいて行く。
「まじけいちゃん大好……ッ!」
彼女が彼氏に何かを告ようとしたその時、ブシュっと鈍い音が響き渡る。彼女の胸部には鋭い触手が突き刺さっていた。
「あぁ〜?えっ…………」
彼女のあまりの姿に、彼氏の酔いは覚め恐怖心へと変わって行く。触手はグシュッと抜かれ彼女は頭からドサっと倒れる。
「……えっ……お、おい……」
彼氏は倒れた彼女を見て拒絶していた。拒絶してきたのもつかの間、彼氏の右目に触手が突き刺さりそのまま後頭部まで貫通した。触手はスっと抜かれ、彼氏も地面に倒れる。彼氏彼女双方とも即死だ。月明かりが現れ多摩川を照らす。2人の死体の近くにはあの”化け物”が立っていた。化け物は用が済んだかのように多摩川付近から姿を消した。
翌朝、多摩川沿岸をランニングしていた男性から警察に”男性と女性が血を流して倒れている”と通報が入った。すぐさま現場にパトカーと救急車が急行した。警察は男性と女性の殺害のされ方が渋谷駅での無差別殺人事件時のものと同等のものだと考え、現場から包囲5キロメートルの区域に包囲網を張った。
警視庁
「また犠牲者が出てしまったか……」
柳内は資料を見ながら眉をしかめた。この事件はマスコミも大きく取り上げ、日本全国で報道されることとなった。
「お前の言う通り……本当にいつ人が殺されるか分からない状況なのだな……」
柳内の目の先にはあの研究者が立っていた。
「はい。これでハッキリしました。」
「しかし……なぜこの生き物は人を殺しているんだ……何が目的なんだ……」
「それは……現時点では分かりません……」
柳内は資料を机の上に置き、席を立つ。その時、1人の警察官が部屋に入ってくる。彼は血相をかいて柳内に言う。
「都内高速道路で男が他の車のドライバーを襲っていると通報が入りました!」
「なんだと……!?」
「現場の監視カメラがこのようなものも捉えました……」
警察官は中央の机に1枚の写真を置く。写真には高速道路の路上で揉める2人の人が写っていた。1人は男性で、もう1人は頭がT字型で腕が触手のようになっていた。
「なんだ……こいつは……」
隣にいた研究者も写真を見つめる。
「この生物は……もしや、こいつがあの細胞の持ち主で……無差別殺人事件の犯人……?」
「だとしたら現場がまずい!高速道路で渋滞が起こればこいつは大勢の人を殺すかもしれない……!現場にSAT(警視庁 特殊即応急襲部隊)を向かわせろ!何としてでも民間人を守れ!」
「わ、分かりました!」
警察官は慌てて部屋を出る。柳内は机の上に置いてある写真を手に取り見つめる。
「こいつが……全ての”元凶”ってわけか……」
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