テラーノベル
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その後も、監視役の男に朝からずっと抱きしめられる日々が続き、監禁最終日前日の五月四日になった。
この日も瑠衣はベッドの上に座り、朝から魂が抜けたような面差しで、窓の外をボーっと見つめていた。
ワークキャップの男は、瑠衣に水分やゼリー飲料を与えつつ、ベッドの上で彼女を抱きしめ続ける。
瑠衣は既に抵抗する気も失い、男にされるがままの状態になっている。
キスもしない、犯す事もない、ただ抱きしめるだけ。
この男は監視役なのに、なぜこんな事をするのだろう、と瑠衣は思っていた。
男は相変わらず無言のままで、指図する時は、顔をフイっと上げる程度の仕草しかしない。
(何でこの人…………喋らないの?)
瑠衣は不気味に思いつつも、おずおずと聞いてみる。
「あの……何で…………ずっと黙ったまま……なんです……か?」
「…………」
ああ、聞くだけ無駄だったか、と瑠衣は諦めに似たような落胆した表情を映し出した。
時間だけが淡々と流れていき、そろそろ深夜に近付いてきた時間。
そろそろシャワーを浴びる時間と感じたのか、男は立ち上がり、瑠衣に括られていた縄を解いた。
男が引き締まった顎をクイっと上げると、瑠衣の手首を掴み、シャワールームへと向かう。
ここに監禁されている時、瑠衣だけが脱衣所に入るが、この日は男も入室した。
「あ、あの……シャワーを浴びたいんですけど……」
瑠衣がおずおずと様子を見ながら言うと、男は沈黙を貫いている。
それでも脱衣所から出ようとしない男に、瑠衣は今一度口を開いた。
「す……すみません……シャワーを——」
瑠衣が『シャワーを浴びたいんですけど』と言い切る直前、男は被っていたワークキャップを取り、サングラスを外す。
「……っ!?」
男と目が合った瞬間、瑠衣は言葉を失い、濃茶の瞳を見開いた。
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