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そう言った。
「サンフラワーって・ヒマワリのことですよね?」
首を傾げると
「だね、これを日本語に解読すると……【近い将来、ひまわりを潰すつもりだ。】ってなるけど」
将輝さんがそう言うと
「不気味な文だけど、楓くんなんか心当たりある……?」
仁さんは眉間に皺を寄せてそう聞いてきた。
「いや、ひまわりを潰すなんて……」
なんのことか、検討もつかないと思ったそのときふと「ひまわり」という言葉にハっとした。
「ま、まさかとは思うんですけど…ひまわりって、俺の店のことかもしれない、です……」
「店?楓ちゃんなんかやってんの?」
将輝さんが疑問をぶつけた。
「えっと、俺自営業で「陽だまりの向日葵」って花屋経営してるんですけど……もしかしたら、何かしら恨みを買ったのかなにか…」
「へえ、クレーマーとか?」
「いや、今までそういう人はいなかったです…!」
「そっか……」
将輝さんは少し考える素振りをして、言った。
「俺が見た感じだと、一種の予告状みたいに思える
けど」
確かに、そうとしか思えない。
「予告状ってことは、もしこの暗号が正しくて〝ヒマワリ〟俺の花屋のことなら…近いうちに店を壊しにくるかもしれないってことですよね……?」
「そうだと思う」
「そんな…一体誰が、なんの目的で…」
そう呟くと、将輝さんは辞書を畳み、腕を組みながら言った。
「…いやあ、なかなか粋なことをするね、この犯人」
その声に目線を上げ
「脅迫するだけなら、普通に日本語でもいいですもんね…」
と溢せば、将輝さんはニヒルな笑いをして
「辞書を使った暗号なんて、手間がかかりすぎる。 普通はやらないね」
「これは俺なりのプロファイリングだけどね、そういう奴は、まず衝動で動かない」
「計画的で几帳面。執念深くて、頭の中で、何通りものシナリオを並べて悦に浸ってるタイプだよ」
そう淡々と、犯人の人間像を語り出した。
「それにこれは、ただの脅しじゃなくて、暗号で〝読ませる〟っていう行為そのものに意味がある」
「辞書式コードを選ぶってことは、〝相手が解くこと〟を前提にしてる。明らかな〝心理的支配〟が目的だろーね」
「心理的支配・・ですか?」
「そう…その証拠に、コードの形式、内容、構成ーー全てに計画性がある。」
「そしておそらく英語の素養がある人間だと思うよ?」
「語学系か、知的な職業一一大学関係者、研究者、翻訳者、あるいは昔その道にいたか」
「たぶん、1人で黙々と作業できるやつ」
「人間関係は浅いか、逆に、どっかで深く裏切られて歪んだか」
「す、すごい、そこまでわかるんですね…」
そこで将輝さんがチャラそうな見た目に反し、凡庸でないことは頷けた。
「まぁ最も重要なのは、何か楓ちゃんに因縁がある人物ってことだよ。それが歪んだ愛か私怨かは分かんないけど」
「歪んだ、愛……?」
歪んだ愛か私怨か、という言葉に引っかかり首を傾げると
「だって、じゃない?」
「悪意や殺意もあまり感じない、普通なら”潰す”なんて直接的なワード、もっと粗雑にぶつけてくる」
「でもこれは、手間をかけて丁寧に暗号に仕込んでる」
「もはや遊び感覚……つまり、楓ちゃんに“伝わってほしい”って気持ちがあるってこと。」
「犯人側からしたら俺の事…弄んでる感じ、ってことですか?」
「まあ、そうとしか考えられないね」
「強い私怨なら、何かされた、奪われた、無視されたっていう過去の傷からの報復が目的だろうけど」
「愛なら、気づいてほしい、気づかせたい。でも受け入れてもらえない。未練と歪みが混ざった恋慕って考えるのが自然かなぁ」
「俺はそんな変な知り合いとかいないんですけど……」
「まぁ俺の個人的な見解だよ」
将輝さんはそう締めくくった。
俺が困惑していると
「楓くん、もうひとつあるんだよね?それも今ここで調べてもらお」
と仁さんが言い出すので遅れて返事をして
ポケットにしまっていたもうひとつの
【p.2155 w.2/p2147 w.11/p.1134 w.16/p.1517w.1/p.2444 w.7】
と書かれた紙切れをテーブルの上に出した。
「もうひとつ、これもあるんですけど・きっとこれも辞書式コードですよね?」
そうして数秒後
数分も経たぬうちに将輝さんは、さっきと同様に暗号に隠された意味を解読してみせた。
「んー。解けたは解けたけど、変な文章だね?まるで学校の教師がいいそうな」
「な、なんて書いてるんですか…?」
「𝐓𝐡𝐞 𝐭𝐞𝐬𝐭 𝐢𝐬𝐧𝐭 𝐨𝐯𝐞𝐫 𝐲𝐞𝐭…日本語に翻訳すると”テストはまだ終わってない、または”試験はまだ終わっていない、ってなるんだけど…なんか心当たりある?」
「そんな、テストなんて、もう俺は中学生や高校生じゃないですし…!」
否定しようとしたとき、試験という言葉と中学という言葉が勝手に脳で重なった。
思わず言葉を濁らせ、その場で固まってしまった。
(試験……試験、体…?…いや、ないない、そんなわけない、あれはもう14年も前のことだし…)
「楓くん?どうした?」
短く問われ、白状するように震える唇を動かした。