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Jasmine
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瑠璃マリコ
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透けたカーテンの向こうに見えたのは、二十畳ほどの広さがあるリビングルームだった。
部屋の中央には、コの字型の大きなソファが置かれている。
私は、その周囲に集う人々の姿を目にした瞬間、その場に立ち尽くした。
目の前に広がる光景――。
それは私にとって、現実とは思えない世界だった。
映像の中でしか見たことのない、遠い別世界。
目の前では、幾組もの男女が互いの身体を求め合っている。
熱を帯びた吐息。
絡み合う身体。
快楽に酔う人々の表情。
腰までスリップを下ろした女性は、恍惚とした表情を浮かべながら身体を揺らしている。
動きに合わせて揺れる豊かな胸元。
太腿を飾るガーターベルト。
その姿は妖しく艶めき、否応なく視線を引きつけた。
ソファにもたれ掛かるように目を閉じる女性。
肩で荒く息をしながら、快楽の余韻に身を委ねている。
部屋のあちこちから聞こえてくる息遣い。
重なり合う吐息。
歓びに満ちた声。
それらが幾重にも重なり、部屋全体を満たしていた。
まさに肉欲と快楽の世界。
複数の男女が入り混じる光景に、思考が追いつかない。
これって……。
乱交パーティー……!
あまりの衝撃に、瞼は瞬きさえ忘れていた。
見開いた瞳の奥がじわりと痛む。
私は両手で口元を押さえたまま、気配を悟られないよう慎重に息を殺す。
本当にこれが現実なのだろうか。
それとも幻想なのだろうか。
真紅のカーテン一枚を隔てた向こう側。
オレンジ色の灯りに浮かび上がる世界。
私には想像すらできなかった非日常。
酒池肉林――。
快楽の世界――。
そして。
ここが、禁断の地……。
信じられないほど淫靡な光景を目の前にして、否定しようのない精神と身体の疼きを覚える。
それを自覚した途端、言いようのない罪悪感が胸を締めつけた。
……早く。
早くここから立ち去らないと。
壁に身体を預けたまま後ずさりし、振り返ろうとしたその時だった。
私はハッと息を止め、再び部屋へ視線を向ける。
「……」
未だにソファに身を投げ出したまま動けずにいる女性。
その顔を、私は食い入るように見つめた。
――あっ!?
あの人……。
赤いドレスを着ていた、会長の孫娘!?
長い髪を乱し、肩で荒く息をする姿は、先ほどパーティー会場で見た華やかな令嬢の面影とはまるで別人だった。
やっぱり……。
あの娘だ。
私は口を半ば開いたまま、ようやく瞬きを思い出したように何度か瞼を動かした。
「彩音ちゃん、覗きなんて良い趣味してるねぇ」
「ひゃっ!?」
背後から突然掛けられた声に肩が跳ね上がる。
悲鳴にもならない声が喉から漏れた。
「悠聖さん! どうしてここにっ!?」
壁に背中を押しつけるようにして身を引き、目を見開く。
「どうしてここにって、それは俺の台詞だよ」
悠聖さんは肩をすくめた。
「大御所のお遊びの進み具合を覗きに来たら、先に彩音ちゃんが覗いてるんだから驚くだろ。……倫子は? まさか、この中に参加してないよな?」
そう言いながら、カーテン越しの光景へ視線を走らせる。
「倫子はここにはいないよ。まだパーティー会場にいる」
「え? 彩音ちゃん、一人でここまで来たの?」
悠聖さんは私へ視線を戻し、大きく瞬きをした。
「えっと……その……」
気まずさに視線を泳がせる。
「お手洗いから会場へ戻ろうとしたら、どっちに行けばいいのか分からなくなって……。ここ、広いから……それで……」
しどろもどろになりながら事情を説明する。
「へぇ〜」
悠聖さんは口元を緩めた。
「それで気がついたらこの部屋の前まで来てて、無意識のうちに中を覗いてたってわけか」
俯き加減の私を見つめ、意地の悪い笑みを浮かべる。
コメント
1件
柏木さくらさん、第14話読ませていただきました🌷 冒頭の、透けたカーテン越しに広がる世界——描写がとても丁寧で、読んでいるこちらまで息を♡♡♡てしまうような緊張感がありました。何より「見開いた瞳の奥がじわりと痛む」という一文に、彩音ちゃんの衝撃と罪悪感がぎゅっと詰まっていて、胸が締め付けられました。 そんな中での悠聖さんの登場。軽やかな口調と「良い趣味だねぇ」の絶妙な距離感が、場の空気を一変させて面白かったです。これからの展開、気になります…!