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頑なな私に、政宗医師はハァとこれ見よがしなため息をついて、
「他に、好きな男もいないのでしょう? ……ならば、おとなしく私のものになればいい」
言葉で責め落とすよう言い放った。
「……いなくたって、あなたのものになんかならない……」
自分の身体を両腕にぎゅっと抱え込んだままでいる私に、
「……無意味ですね、そんなことは……」
彼は、ふっ…と低い笑いを浴びせると、
「……他には、道もないのですよ、あなたには」
ベッド脇のサイドテーブルに置かれたメガネを取り上げて、
「……私の自由になることこそが、あなたに残された、唯一の道なのですから……」
人差し指と親指で、フレームをクッと押し上げた。
「……私になんか構わなくたって、あなたには思い通りになるような女性は、たくさんいるはずですよね……」
もう触られたくはない一心で身をこごめ、その顔をキッと睨みつける。
「たくさんいることと、その女性を自由にしたいと思うこととは、別問題です」
こちらの感情の荒れようなど知る由もない、抑揚のない物静かな口調で応えられたことに、堪え切れない憤りを感じ、
「……愛なんか、ないくせに……っ!」
無感情な男に、感情的な言葉を投げつけた。
「なぜ、ないと思うのです?」
メガネの奥から、訝しげに細められた瞳が、つぶさにこちらを見据える。
「……愛なんか、感じられません…あなたには……」
その目を見返し、本音をぶちまけると、
整然と美しいその顔が、微かに歪んで、
「心外ですね…」
と、告げた──。