コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「―よっと、」
老人は重い腰を下ろし四畳半の座敷に尻をついた。畳の上には周囲のどの風景にも似合わないプラスチックや金属製のパーツが乱雑に並べられている。少女の形を模したそれはものの一時間ほどで地に足をついた。
『初期設定ヲカイシシマス。パーソナルナンバーヲ入力シテクダサイ。』
老人が入力を終えるとその金属人形は起動音と共に立ち上がり、静かに老人を見つめた。
老人は少女の目と同じ高さまで腰を下ろし、優しい笑顔で問いかけた。
「お前さん、名前は?」
「私に個人名はありません。識別コードであればこちらに記載されております。」
と、左の鎖骨に刻まれた十六桁の数字を指さした。
「そうか、なら名前をつけてあげないとのう」
老人は少し悩んだ様子で目を瞑り、寸秒してから目を開いた。
「〝紗〟なんてどうじゃろうか」
彼はそう言って、私に名前をつけた。