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美花の父、和樹は、自身が経営する浦野工務店で、社長兼大工をやっていた。
現場から自宅へ戻る途中、対向車線から、猛スピードでセンターラインを超えてカーブを曲がってきた大型トラックと、和樹が運転する二トントラックが正面衝突し、帰らぬ人となってしまったのだ。
まだ中学一年生だった美花は、大好きな父でもあり、DTMで音楽を作る師匠でもあった和樹が亡くなり、ショックが大き過ぎて、泣き暮れる毎日を過ごす。
どれくらいの間、悲しみに打ちひしがれていたのか、彼女も分からない。
DTMをする気すら起きない状態に、美花は陥ってしまった。
和樹が、天に召されてしまった事で、美花と雪の生活は一変した。
母は、調理師免許を持っている事もあり、父が残してくれたお金で、現在の場所に住居兼店舗を建て、『家庭料理 ゆき』を開店。
和樹の知り合いである職人たちの厚意で、かなり安く家を建てられた。
当時の浦野家は、立川駅の南口から徒歩十五分ほどの場所に住んでいたため、引越しするとなると、美花が転校する事になってしまう。
多感な時期の美花を思い、雪は、娘が中学卒業を迎えるまで、自宅から店まで、自転車で通勤する事にした。
中学卒業と同時に、現在の家に転居した母娘は、心機一転、新たな生活をスタート。
美花は、都立昭島高校に入学と同時に、家計を助けるため、立川駅近くのファーストフード店でアルバイトを始めた。
毎日のように、アルバイトをする美花に、雪は申し訳ないと思いつつ、和樹が亡くなってから心に燻っていた思いを、娘に打ち明ける事にする。
『美花。もう…………パソコンで音楽を作らないの?』
『でもさぁ…………お父さんが亡くなって、それどころじゃないでしょ?』
『…………それでも、心の拠り所は…………あった方がいいよ。たったひとつでも、趣味とか好きな事があれば……心が辛くなった時、それが支えになるんだよ』
どこか無理して笑顔を作っている美花に、母は逡巡しながらも、おずおずと切り出した。
『…………いいの? また…………音楽作っても……』
『もちろん! 家計のためだけにバイトをするのは、美花も精神的にキツいでしょ? でも、申し訳ないけどさ、パソコンとか、音楽を作るソフト? それは美花のバイト代から出してね』
『…………うんっ!』