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…半年後
今日は10月13日。
遥香の誕生日でもあり、遥香の婚約者である平井さんの誕生日でもあった。
ついでに言っておくと、僕の誕生日でもある。
そして2人の結婚式が行われる日でもあった。
結婚式…僕と葵は式を挙げる事はなかった。
葵がしたくないと言ったからだ。
きっと葵は僕と結婚した後、2年足らずで消えてしまう自分が結婚式をしようなんて許される訳がないと思っていたに違いない。
本当は誰よりも結婚式とウェディングドレスに憧れていたくせに…‥
僕に隠れて結婚情報誌を読んでたくせに…‥
我慢なんかしやがって…‥
「紺野くん、早くしてよ。遥香たち、式場に着いたって連絡があったんだからね。もぉ~遅いんだから。先に車に乗ってるから早くしてよ」
美咲さんは、そう言うと玄関を出て外に行ってしまった。
「ちょ‥ちょっと待ってよ」
いつもなら美咲さんが支度に手間取って僕を待たせているくせに、たまたま今日は早かったもんだから、あんな言い方して…。
僕は結婚式用に買ったスーツを慌てて着ながら玄関に向かった。
ドッ!?
「うっ…」
タンスの角に足の指先を思い切りぶつけてしまった。
そして勢い余った僕はそのまま前に倒れ込んだ。
ゴキッ!?
「イタッ」
ドンッ…バタンッ…‥
とっさに体を支えようと地面に手をついたが、片手で体重を支えられる訳もなく、そのまま転倒してしまった。
どうやら手首と親指から中指にかけてを捻挫したらしく激痛が走った。
「あぁぁ……イテテテテテ………」
しばらく倒れた状態のまま手を押さえて痛みに悶えていたが、みるみるうちに腫れ上がってくるのかわかった。
「紺野くん、今の音どうしたの?」
1度は玄関の外に出て行った美咲さんだったが、先程の音に驚いて戻って来たようだ。
「ちょ‥ちょっと転んじゃってね…」
「どうしたのその手? 大丈夫?」
美咲さんは靴を脱ぎ捨てると慌てて僕の元にやって来た。
「へヘへ…」
「わっ‥笑ってる場合じゃないでしょ? こんなに腫れちゃって…」
美咲さんは僕が押さえていた手をどけて患部を見ると、顔を青ざめながらそう言った。
「大したことないよ…」
「そんな訳ないでしょ」
それから美咲さんに湿布を貼ってもらい、包帯でグルグル巻きに固定してもらった。
そして応急処置を終えると直ぐに車に乗り込んで、美咲さんの運転で式場に向かった。
「何処だかわかるの?」