🖤side
しょっぴーが急に家に来なくなった。
何かがあると、隠せない人なので、事情を聞きたいけど、強引にいくのは憚られた。どうしても振られる恐怖が先に立つ。
付き合いだしてから、俺たちの職場での距離感は相変わらず遠い。
以前は、俺とラウールとしょっぴーでよくつるんでいたのに、今はしょっぴーは阿部ちゃんとばっかりいる。阿部ちゃんは穏やかな人だから、一緒にいてきっと落ち着くのだろう。
そんなこんなで半月近くの時が流れた。
忙しくしているから、スケジュールは埋まっているが、日々の彩りはみるみる失われていく。
楽しいはずの日常が、ただの忙殺される毎日に変わっていくのが辛くて、俺はしょっぴーにメッセージを送った。
🖤『しょっぴー、何してるの?』
既読はなかなかつかない。
5分おきにメッセージを確認する自分に嫌気がさし、携帯電話を放り出した。
すると、3時間ほど空いてから返事が返って来た。
💙『サウナ行ってた』
ファン専用のブログには、ほぼ毎回サウナへ行く報告がある。あとは他のグループのメンバーと親しくしていたり。
俺に使う時間以外も誰かといる。
それが寂しいし、悔しい。
🖤『寂しい。しょっぴーに会いたい』
💙『ちょっと今忙しい』
そっけない返信が来て、俺はため息を吐いた。
声が聴きたいと電話を掛けたら、うるさがられるだろうか。
最後に会った日のキスが、頭の中に引っかかっていた。
自分ではこれでも大分我慢している方だと思うけど、しょっぴーにとっては早すぎたんだろうか。付き合い方の足並みが合わなくてもどかしい。
贅沢にも、好きになってもらっただけでも嬉しかった時期は過ぎた。
今はもう、しょっぴーを愛して、愛される確証が欲しいし、関係を持ちたいと思ってしまっている自分がいる。
こんな俺は我儘なんだろうか?
悶々とした日々を過ごしていたある日。
ラウールが突然家を訪ねて来た。
🤍「ごめんね、俺で」
🖤「何が」
🤍「俺じゃない誰かを、待ってたんでしょ」
慌てて表情を整える。
ラウールは何か言いたげにしたが、そのまま何も言わずに黙っていた。
🤍「めめの家、何も変わんないね」
ラウールは、家の中を一通り見回している。どこかにあるべき恋人の痕跡でも探しているのだろう。しかし、そんなものができる前にしょっぴーは来なくなってしまった。
思わずため息が出た。
🤍「めめ、今、好きな人とうまくいってないんじゃない?」
少しイラっとして、黙る。
気遣うようなラウールに、なぜか腹が立つ。筋違いなのに、最も親しいラウールの気遣いに苛立つなんて。 物事が少し思い通りに運ばないだけで、こんなに俺って自分勝手なのか。
そう思った時。
🤍「あのさ、めめ。俺また、時々ここへ来てもいい?」
🖤「えっ」
🤍「めめがどうしても必要なんだ。俺」
🖤「………」
🤍「俺たち個人の仕事も多いでしょ?前よりめめといられないし。ここに来ないと相談もしづらくなって寂しい」
ラウールのまっすぐな気持ちが胸に刺さる。
それに、この大きな目で覗き込むように見つめられると、どうも弱い。今では俺よりも大きくなったラウール。それでもまだあどけなさ、少年ぽさは瞳の中にどこか残っていて、その目に見つめられてしまうと、どうしても守るべき存在だと感じてしまう。
🤍「俺ずっと考えてた。なんで最近のめめ、元気がないんだろうって。もしかして、好きな人とうまくいってないの?」
🖤「………」
🤍「それなら俺といる方が絶対、楽しいと思わない?」
🖤「ラウ……」
🤍「……ごめん。邪魔して。でも、めめは1人じゃないよってことわかってほしかった。いつでも俺がついてるからね」
声が震える。
ラウールは、久しぶりに涙を見せた。
🤍「ただの友だちなのにごめん。俺にはめめ以上に頼れる人がいなくてすごく寂しかった…」
そう言って、泣くラウールの頭を撫でる。
いつまでも俺の前では変わらない。大切な弟のような存在だ。ここのところしょっぴーに浮かれていて置いてけぼりにしていた。
🖤「ラウのこと、ほっといてごめんな。また遊びに来てもいいよ」
🤍「ほんと???」
ラウの顔がぱっと輝く。
俺も俺で、少し時間が必要なのかもしれない。素直にそう思った。
コメント
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ラウちゃん、、