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「ふたりそろって登校だなんて、朝から仲良しだねー!


もしかしてもう付き合い出したー?」



あさ美がにやにやしながら私と北畑くんを交互に見て笑うから、私は慌てて「違うよ!」と声をあげた。



「マジでそうなれたら嬉しいんだけど、なんせみどりがぜんぜんその気ないから」



北畑くんは悲しそうな顔であさ美に言う。



でもすぐに笑うから、その顔はさっきまでとぜんぜん違って、いつもの北畑くんだ。



「もうそんなこと言ってー!


一緒に登校してきてるなら、緑もまんざらでもないんじゃない?

ほらほら、早く付き合っちゃえ!」



「ほんとだよ、早く付き合って」



あさ美に乗っかる形で言う北畑くんに、私は「もう!」と言って、ふたりを置いて教室へ続く階段をあがり始めた。






「あ、緑が照れたー!」



あさ美の笑い声が後ろから聞こえる。



階段をあがってどんどんふたりと離れると、さっきの北畑くんの話が頭をよぎった。




まさか智香ちゃんと本当の兄妹じゃないなんて……。



そんな事情があるなんて、知ってしまって少しドキドキする。



でも……どうしてさっき、北畑くんはあんな顔で言ったんだろう。



たしかに智香ちゃんは、私のことを好きではないみたいだけど、そこまで話してくれなくてもいいんだけどな……。



そう思って、「あ」と足が止まった。



もしかして……智香ちゃんは北畑くんのことが本当に好きなのかもしれない。



そうして、そのことを北畑くんが知っているのかも……。



だから私に「迷惑をかけた」と思ったのかもしれない。



「うわ……。なんだかかかわると本当にまずそう」



思わず呟くと、後ろから北畑くんとあさ美の話し声が聞こえて、慌てて足をせかした。







それから体育祭の準備が始まった。



パネル係の私は、仕方なく北畑くんと放課後残って作業をしている。



当日が近づくにつれ、居残りの頻度は多くなって、自然と北畑くんといる時間も増えた。



北畑くんとはあいかわずだけど、一緒にいるうちにいろんなことが慣れてくる。



たとえば、もう「ねーねー」は気にならないし、登下校が一緒なことももう慣れた。




「あー!やっと終わったー!」



北畑くんが突然大きな声をあげるから、びくっとしてとなりを見ると、彼がつくっていた一番大きなパネルが完成していた。



「おー、終わったんだ。すごいきれいに塗れてるね」



知らなかったけど、北畑くんは器用で、色づかいのセンスもいい。



「サンキュー!


はーやっと終わったよ。腰いたい」



「そりゃあれだけ大きなやつ作ってたらしんどいよ。ちょっと休憩したら?」



「いやいいよ。みどりのほう手伝う」



「あ、ありがとう」



私が今いる場所をすこしずれると、北畑くんはペンキにひたしているハケをつかんで、あいている場所に色を塗り始めた。








「今日中に終わらせよーよ。そしたら明日は設置だけで帰れるし」



「最終下校まであと1時間か……。よしやれるだけやってみる」



体育祭は明後日にせまっていて、明日も作業となると当日にひびきそうな気がした。



時計を見た私は、北畑くんにうなづいて、ペーパーでできたお花をパネルにはりつけていった。



そして一時間後。チャイムがなり、パネルは最終下校ぎりぎりで完成した。



「よっし、これで明日は楽だな!」



「うん、ありがとう手伝ってくれて。なんとか終わったね」



ペンキを棚にもどしながら言うと、北畑くんは満足そうに笑った。



でも少し離れたところで「あーっ、終わらなかったよー」と嘆きの声が聞こえて、見れば仮装の衣装係の子たちだった。



うーん、あっちも大変そうだな……。



私は鞄からチョコをだして、衣装係の女の子たちへ近づいた。



「はい、おつかれさま。大変そうだね衣装……」



「あっ、緑チョコありがとー!


うん、でもなんとか明日中には終わるよ。あと少しだし」



「がんばってね」と声をかけながらチョコを配ると、私は北畑くんにもチョコを渡す。



「はい、お疲れさま」



「やった、緑からのチョコ!これ本命だよね?」



「え……どこをどう見ればそう思えるの……?そんなわけないじゃん」



「うわ、やっぱみどりは即答だなー。


でもこれは義理チョコでもバレンタインは期待してるから」



「なんでそうなるのよー」



脱力しつつ、私は手を洗い、鞄をつかんで多目的室を出る。



後ろをついてきた北畑くんは、下駄箱で私に言った。







「ねーみどり、腹へらない?」



「え? そりゃお腹はすいたけど……」



なんだかイヤな予感がして、顔を見ないようにして答えると、北畑くんはずいっと私の前に顔をつきだした。



「わっ!ちょっと、びっくりするじゃん!」



「腹減ってるよね?


じゃあどっか寄って帰らない? パネル完成した打ち上げに!」



「打ち上げって……体育祭自体がまだ明後日じゃん」



「そうだけどさー、俺とみどりの合作パネル完成記念で打ち上げしたいし」



「ええー……」



たしかにパネルが完成したのは嬉しいけど、北畑くんと寄り道は気が進まない。



靴を履き替え、返事をしないまま私は校門に向かって歩く。



でも私の態度は予想通りなのか、北畑くんも引き下がらなかった。



「いいじゃん、ほら打ち上げしようよ!


苦労してつくったパネル、やっと全部完成したんだしさー」



「そうだけど……打ち上げってさ、一大イベントが終わった後とかにするものじゃないの?」



「パネル完成も一大イベントじゃん。じゃあ体育祭が終わった後ならいい?」



「べつにそういうつもりで言ったんじゃないってば」



なんでもポジティブに受け取ろうとする北畑くんに、あいかわらずついていけない。



でもこれが北畑くんの標準なんだって、最近ではわかってるんだけど……。








「それならさ、体育祭が終わったらその打ち上げとパネルの完成打ち上げを合わせればちょうどよくない?」



合わせたらちょうどいいって……。



それのどこが「ちょうどいい」んだろう?



わけがわからないけど、でも彼がこう言うのもちょっとわかる気はしているんだよね……。



だって北畑くんはたしかにすごくパネル制作を頑張っていたから。



真剣にやっていたのを見ていたから、いろいろ話したいこともあるんだろうし、ちょっと付き合うくらいなら付き合ってあげてもいいかな……。



「じゃあ……」



「え?」



「いいよ。付き合う」



「えっ、ついに俺と!?」



「はっ? そっちじゃない!


打ち上げ! 打ち上げに付き合うって言ったの!体育祭が終わったらねっ」



「なんだ……。


めっちゃドキッとしたのに……。みどりはあいかわらず思わせぶりだなぁ」



「思わせぶりって、そっちが勝手に誤解したんでしょ!」



いつのまにか声が大きくなっていたらしく、すぐ前を歩いていた女子生徒がこちらを振り返った。



目が合って「あっ」と足を止めた時、となりにいた北畑くんがぎゅっと私を抱きしめる。













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